安土城

□お子様は寝る時間
1ページ/5ページ









その日、安土城内の大広間では緊急の軍議が開かれていた
急に招集された武将たちは一体何の緊急事態かと真剣な顔で居住まいを正していた




「全員、集まったようだな」




静まる広間に信長の低くよく通る声が響く




「御館様、一体どうなさったのですか?
このように緊急に将をお集めになったということは、」

「戦でも始まるんじゃねぇのか?」




信長の言葉を静かに待つ秀吉に対して
政宗は既に闘争心溢れる眼差しで口角を上げていた




「あぁ、由々しき事態だ
早急に策を練らねばならぬ」

「それでは、やはり」




戦が始まるのだと、広間にいた全員が改めて身を引き締めた次の瞬間、広間の襖が無造作に開いた




「信長さまぁ!こんぺいとう みつけましたー!!」

「「「!?!?!?」」」

「なんだ、もう見つけたのか
難しいところに隠したつもりだったのだが…、貴様 やはり忍としてこれから育てるか…」




宝探しの宝物を見つけたような誇らしげな顔をして広間に入ってきたのは幼い少女だった
少女は小さなツボを大切そうに抱え信長に駆け寄った




「御館様…この子どもは…」

「まさか紅との子どもじゃないですよね」

「いや、それは無いでしょ
紅が城に来てからまだ1年くらいしか経ってないんですから」

「こいつは、紅だ」

「「紅?!」」




広間にいた全員が声を揃えた




「まさか、他の女に産ませた女に紅と同じ名前つけたんじゃ」

「だから、こいつが紅本人だ
俺も半信半疑だが、本人がそう言うのだ
それに紅の姿が見えないのは事実だしな」

「そういえば紅様のお姿がありませんね」

「紅の姿が見えず、この小さいのが自分のことを紅だと言うのだから紅なのだろう」




信長の横でツボに入った金平糖を美味しそうに食べる幼子を武将たちがまじまじと見る




「そう言われてみると確かに面影があるような…」

「しかし、もしこの小さいのが本当に紅本人だとして、どうしてこんな姿に」

「いきなりこうなっちまったんだから、そのうち、またいきなり元に戻るんじゃねーのか?」

「紅様は未来から来られた方ですし、未来では周期的に幼子に戻ってしまうものなのでしょうか?」

「それなら紅と同じ未来から来た春日山城の忍にでも聞いてみたらどうです?」

「それは妙案だな、家康」

「早速、使者を遣わしましょう」




光秀はそう言って広間を後にした




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ