short dream devil

□Jeses never cry
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「Okay I will be there」

弾むような声がそう告げた後に、受話器が宙を舞う。

「合言葉のある客だ」

悪戯っぽく青い瞳を輝かせてダンテが言う。

「ミア、店番頼んだぜ」

「はいはい。行ってらっしゃい。ダンテ」

気をつけてなんて、余計な台詞は呑み込み笑顔を向ける。

ダンテは、エボニーとアイボリーをホルスターに収めると、壁から大剣を取り背に担いだ。

嬉々とした瞳で一瞥をくれると、真っ赤なコートを翻して店の外へと出て行く。

私はその背をぼんやりと眺めながら、溜息をついた。



密かに用意したケーキとワイン、それからプレゼント。

どうしようか?

悪魔のダンテと、神様の生誕を祝おうなんて、そもそも間違っていたのだろう。

半分人間の血が流れているとは言え、彼には少しも信仰心なんてない。

それでも、人並みの恋人同士みたいに過ごしてみたかった。

そんなことダンテには言えない。



クリスマス休暇中に風変わりなこの店をそうそう訪れる客人もいないだろうけど、離れるわけにもいかない。

ジュークボックスの側に歩いて行くと、お気に入りの曲のナンバーを押す。

軽快なロックンロールを聴きながら、革張りのソファに転がると、雑誌を捲る。

そうやって長い時間を費やしてから、窓の外を眺めると、暗闇に舞い落ちる雪を店のネオンの光がチカチカと輝かせていた。

「いつの間にか雪が…。ダンテ、風邪引かないかな…?」

呟いてから、小さな笑いが漏れる。

悪魔は風邪引かないんだっけ…。

その時、唐突に店のドアが開いて、冷たい北風がどっと流れ込んでくる。

「寒っ……」

赤いコートの腕に、溢れんばかりの真っ赤な薔薇を抱いて。ダンテが舞い戻って来た。

「ダンテ…?」

「まったくどこの店も開いてなくて参ったぜ。知り合いの店で無理やり用意してもらったんだ」

人の迷惑も顧みずに得意げに笑うダンテが、私に薔薇の花束を押し付ける。

「ミア、遅くなって悪いな。俺からのクリスマスプレゼントだ」

「クリスマス…?ダンテが…?」

「まぁ、俺には信仰心はないが、おまえは違うだろ。それより、ケーキ、俺の分も取ってあるだろうな?」

「え…?どうしてそれを?」

「朝からキッチンで焼いてただろ。匂いで分かったぜ。俺の好きなストロベリーケーキだろ?」

「そうよ…。ワインもあるから一緒に飲みましょう」

私の答えにダンテがにんまりと微笑む。

「あの、ダンテ、薔薇をありがとう。すごく嬉しい…」

期待してなかったから、余計に…。

「ミア…」

つと、伸びたダンテの指が私の目尻に触れる。

「人間の涙は、綺麗だな…だが、何故、泣くんだ?悲しいのか?」

やや困惑したダンテの表情に慌てて首を振る。

「違うの…これは、嬉し泣きだから…!」


大切な人を亡くして、涙を流す優しい悪魔だっているのを私は知っている。

それだけで、私がダンテの側にいたい理由は十分だ。


「ダンテ…大好き」

「いや、その、ミア、おまえ、何煽ってんだよ?ケーキより先に喰われたいのか?って言うか、喰わせろ」

「だめっ…ケーキお預けにするからね…!」

軽く舌打ちするとダンテが私の頬にチュッとキスをして、耳元で囁く。

「俺も好きだぜ。ミア」


そうして、ケーキとワインを傾けながら、二人の夜は更けてゆく。



Merry Christmas☆

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