小説

□告白宣言
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「おそ松兄さんってさ、今好きな人いるの?」
「好きな人?んなのトト子ちゃんに決まってんだろ。いきなり何チョロ松〜。恋バナしたいの?」
「まあね」
いつもなら「そんなんじゃないけど」とか何とか言って誤魔化すところだけれど、そんなことはしない。
「え〜お前好きな奴いんの?しかもトト子ちゃんじゃない子?」
「うん」
「分かった!レイカでしょ?」
「レイカって誰だよ!?ニャーちゃんだろ!そりゃニャーちゃんのことは好きだけど、恋愛の意味とは違うんだよ。ニャーちゃんは僕にとって宗教みたいなものなんだよ」
「あ、そう。なるほど分からん」
「分からなくていいよ。お前に分かって欲しいことは別にあるから」
「別?」
「本命は誰だと思う?」
「ネタ切れ。もうお手上げ」
それもそのはずだ。
分かる訳がない。
「じゃあ教えてあげるよ。今僕の目の前にいる人」
「?」という顔で兄さんが部屋の中を見回す。
「あの〜チョロ松、今俺とお前しかいないけど?」
「だから兄さんだって言ってんじゃん」
「え?今日エイプリルフールだっけ?」
「今11月だろ」
「何の冗談?いやあ、お前も冗談言ったりするんだね」
「冗談でも何でもない!僕はお前が好きなんだよ!」
結局いつもみたいに怒ってしまう。
こんなはずじゃなかったのに。
「ま、まじで言ってる?」
「だから冗談でこんなクズに告白する訳ねえだろバカ!」
「なんでキレるんだよ!?」
「だって、お、おかしいだだろ!男だし、兄弟だし!気持ち悪いだろ!?」
「まあ、びっくりしたけど…」
ひきつっている兄さんの顔を見て図星なんだろうと見当がつく。
「お前、そっちだったんだ?」
「…違う。僕は女の子が好きだよ。ゲイじゃないんだ。だけど性別なんか関係なく兄さんが好きだって思ったんだ。兄さんが女でも男でも好き」
「…チョロ松、疲れてんのか?」
「本気だって言ってんだろ!」
飛び掛かる勢いでおそ松兄さんに抱き付いた。
勢い余って二人で床に倒れる。
「いってえよバカ松!苦しいっての。分かったからさ」
二十歳過ぎの男が何やってんだろう。
空しくて情けなくて泣けてくる。
「お前は僕のこと受け入れもしなければ突き放したりもしないだろ。だから嫌なんだ。ぬるま湯みたいな優しさなんかいらないんだよ」
おそ松兄さんの手が僕の頭を撫でる。
「うん、ごめんな。お兄ちゃんお前の気持ち分かってあげられないんだわ。あれだろ、なんかこう、童貞拗らせたんだろきっと」
「残念だけど僕は正気なんだよ。ねえだから僕を受け入れてよ」
「チョロ松…」
「兄弟が変態でも平気なんでしょ」
「そう言ったけどまさかこんな日が来るとは思わないじゃん?」
「ぼっ僕は諦めないから!クズ童貞長男を僕に惚れさせてみせるから!」
「掘れさせてみせる!?」
「若干違うけどいずれそうなるからいいや!」
「何がいいの!?お兄ちゃんの処女狙ってるんでしょ!?犯される!おい誰かいないのお!?」
「今は犯さねえよ!とにかく!そういうことだから覚悟しとけよゴルァ!」
「なんでキレてんのこの子!?」
こうして謎の宣言をしてしまった僕は、兄さんを落とそうと必死になった。
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