小説

□だって戻れない
1ページ/2ページ

そんなつもりなんてなかった。
なんて、今さら言っても言い訳にしかならない。
全く持ってどうしたものか。

その日夜中にトイレに起きると、居間に明かりが点いていた。
覗いて見ると、おそ松兄さんが一人でAVを見ていた。
「おう、一松。お前も見る?」
え、一緒に見んの?
そういう気分って訳でもないんだけど。
「トイレしに来ただけだから」
「遠慮すんなって〜。トイレ済ましたら来いよ」
特に断る理由も思い浮かばず、トイレを済ませておそ松兄さんの隣に腰を下ろした。
「な〜んか今日の彼女いまいちだな〜。失敗したあ」
「そうなの?」
「もっとおっぱいでかい子にすれば良かった。」
「でかすぎるのも微妙じゃない?」
「え〜俺はボインがいいんだよ〜。一松的にはどうです?今日の彼女は」
「喘ぎ方がわざとらしいですね。77点です」
「さっすが一松!分かってるねえ!」
わしゃわしゃと頭を撫でられる。
「あざーす」
どんなことであれ褒められるのは嬉しい。
「なあ、抜いてやろっか?」
「は、はあ!?」
何この人本気で言ってるの?
兄弟だぞ無理だって。
よく見ると何本かビールを空けているようだ。
「兄さん、あんまり飲むとチョロ松兄さんがうるさいよ」
「シコ松はいいんだって。俺は今一松に聞いてるの」
「ねえ酔ってるの?」
「どうだろ。そんなにって訳でもない」
「やめておこう。素面に戻った時後悔する」
「確かに」
ゲラゲラと兄さんは笑った。
「じゃあちゅーしよう」
いやだからなんでそうなるんだよ。
「絶対酔ってるよね?もう寝なよ。ほら」
AVとテレビを消して、おそ松兄さんの腕を引っ張る。
空き缶は…まあいいや。
「一松がちゅーしてくれなきゃ寝ない」
「はあ…?めんどくさい彼女みたいなこと言わないでよ」
「やだやだ〜!しろよ!ディープキスしただろお前!俺のファーストキス奪っただろ!?責任取れよ!」
「あれはノリじゃん。兄弟なんだからノーカン」
「ねえ、あの時の悪くなかったって言ったらどうする?」
俺を試すような目に思わずドキリとした。
弟になんつう顔してんのこいつ。
で、その弟は何興奮しかけてんの。
「どうもしない」
何だか取り返しのつかないことをしてしまうんじゃないかと怖くなってつかんでいた腕を離す。
「寂しいこと言うなよお。じゃあいい。この前のお返しな」
思い切り肩をつかまれると、そのままキスをされた。
しかもご丁寧に舌を絡ませてきた。
嫌らしい音が鼓膜をくすぐる。
まじで何してくれてるのこの人?
でもそれよりもなんで今頭ん中とろけそうなの?
なんでこんなに、気持ちいいんだ?
唇からどちらのものかも分からない唾液が垂れる。
「…はっ、ざまあみろ、一まちゅ」
したり顔のおそ松兄さんが、唇の端に垂れた唾液を拭う。
「…何なのさっきの。すごい気持ちいんだけど…」
「だろお?なんでだろなあ」
本当になんで、兄さんがいきなりエロく見えるんだろう。
触りたい。
もっとエロい顔のこの人を見たい。
「ねえ、俺今一松とエロいことしたい」
「奇遇だね。同じこと思ってた」
乱暴におそ松兄さんを押し倒して、唇を吸う。
パジャマの下から手を突っ込んで体をまさぐった。
男同士でやることになるとは思わなかったし、何をすればいいかもよく分からなかったけど、とにかく兄さんに触れたかった。
ボタンを外してパジャマをはだけさせる。
兄弟の裸なんて見慣れてるのに、なんでこんなに興奮するんだろう。
とりあえず胸の突起をいじってみる。
「ん〜、乳首よくわかんねえ…」
「じゃあ舐めるね」
自分もよく分からないけれど、AVを思い出しながら舐めたり吸ったりしてみた。
「…あっ、やばい。気持ちいいかも…ねえ、ちんこも触ってよ…俺もお前の触るからさ」
そこからは18禁ゾーンへ突入するので割愛する。
とにもかくにも俺はしてはいけないことをやってしまった。
やってしまったっていうかヤってしまった。
した後は眠くてたまらなかったので、俺と兄さんは素知らぬ顔でいつものように布団に潜って眠った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ