小説

□似たもの同士
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やっとの思いで好きだと告げると、情けなく涙がこぼれてきた。
例え馬鹿でも泣いている俺を見れば、ただの兄弟としての「好き」ではないと分かるだろう。

「俺も好きだよ、一松」

おそ松兄さんがボサボサな俺の頭をなでる。

「だから、そいう意味じゃないんだよ。...恋愛の方の、好き」
「まじで〜?やっぱ俺カリスマレジェンドだからな。実の弟の心まで奪っちゃうなんて」

本当は全て分かってるくせにおそ松兄さんはごまかす。

「なあ、それって長男だからじゃないの?みんなのリーダーみたいな?俺、何にもできないよ。ただ一応長男ってだけ」
「知ってるよ。パチンコと競馬が大好きなクズニート童貞ってことくらい」
「言うねえ一松くん。ってかひどくない?俺そこまで言ってませんけど?」

特別に何かあるわけでもできるわけでもない。
それでもなんでかおそ松兄さんが好きで、苦しいくらいで息をするのも嫌になる。

「何もできなくたってただあんたは馬鹿みたいに笑ってくれればいいんだよ」
「泣くなよ一松〜」

ただ笑ってくれればいいだなんて、何を言ってるんだろう。
さっきからずっとおそ松兄さんが頭をなでるから、余計に髪はボサボサになっている。

「…自分でも分かんないんだよ、なんでおそ松兄さんなんか…良いとこないのに…」
「さすがにお兄ちゃんも泣くよ?一松」

涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔を腕で拭う。
もうめちゃくちゃだ。
頭が痛い、あと死にたい。

「お前の特別になってやってもいいよ」
「…意味分かって言ってんの」
「分かってないかもな。まあ細かいこととか気にしなくていいんじゃない?」
「じゃあ俺と付き合ってくれんの?普通にキスしたりヤらせてくれたりするの」
「いや無理でしょ。俺ノンケだし」

言わんこっちゃない。
分かっていたことであってもやっぱりショックだ。

「でもキスしなくたって恋人にはなれる。お前ら前家出て行ったろ。一松なんかあてもないのに出ていきやがって、一番心配だったんだぞ。何も言わなかったけどさ。あの時お前らがいなくなってつまんなくて死ぬかと思った。何も喋る気にならないくらい。また元のニートだけどさ、いい年してそんなんだよ俺」

「だからさ」とおそ松兄さんは続ける。

「俺一人じゃ生きてけないって実感した。一松も同じだろ?割りと似た者同士だよなあ俺達。お互い似てんだからうまくやってけるんじゃない?」

そんな考え方もあるのか。
この人はいつだって俺の後ろ向きな考えを引っくり返す。

「…おそ松兄さんがそれでいいなら」
「そう?じゃそういうことで今から恋人な!俺が寂しい時かまわないと駄目だからな〜!」

「ひでえ顔」と笑いながらおそ松兄さんがティッシュを差し出してくる。

「...ありがとう」と、小さな声で言ってティッシュを受け取る。

「どういたしまして」とにやけるおそ松兄さんはきっと俺のことなんか全部お見通しなんだろう。
この人には敵わない。

おそ松兄さん、僕を恋人にしてくれてありがとう。




-end-
一おそは一→→→おそなイメージです。
公式絵で二人が隣同士にいるとすごく萌えます。
ありがとうございました!
201687

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