小説

□言える訳ない
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「いや〜、平日の昼間から飲む酒はうまいねえ一松くん!」
「相変わらずクズだよねおそ松兄さん」
「それお前に言われたくないわ〜」
「ですよね〜」

だはは、とおそ松兄さんは満足気に笑った。
強い酒をわざわざ買ったのは馬鹿な望みがあるからだ。

「ねえおそ松兄さん好きって言って」
「え〜なんで〜?」
「言って欲しいから。お願い」
「可愛い弟の頼みならしょうがねえな〜。好きだよ一松。大好き〜」

おそ松兄さんはそう言いながら俺の膝の上に倒れ込んできた。
いつか兄さんが俺にしたように、俺も兄さんの頭を撫でる。

「…俺も、おそ松兄さんが好きだよ」
「嬉し〜〜〜!俺も一まちゅ好き〜〜〜!両想いじゃん!へへへ」

嬉しそうな笑顔を向けると、おそ松兄さんはそのまま眠ってしまった。
兄さんは酒に強いから酔わせるまで大変だった。
反対に自分は酒に弱いから、あまり飲まずにほとんど兄さんにすすめて正解だ。
たった一言の言葉が欲しい為にわざわざおそ松兄さんを酔わせるなんて。

「…馬鹿だな」

もう一度おそ松兄さんの頭を撫でてから、そっと部屋を出た。
急激に恥ずかしさが込み上げてきたからだ。
目覚めた兄さんにどんな顔で会えばいいのだろう。

「一松…なんか酒臭い?昼間から飲んだの?」

帰ってきたチョロ松兄さんに飽きれ顔をされる。

「ちょっと…ね」
「顔赤いし…さてはおそ松兄さんに付き合わされたんだろ。大丈夫?」
「…平気。猫に会いに行って来る」

正確には飲もうと言い出したのは俺で、顔が赤いのは自分のしたことが恥ずかしいからだったけれど、言える訳がなかった。

「あれチョロ松お帰り〜」
「おいクソ長男、昼間から飲むなよ!只でさえニートなのに…酒くせえ、飲みすぎだろ!」
「だって一松が飲もうって言うから〜。つか俺はまだ全然飲めるけど」

珍しく一松が酒を持ってきたから何を企んでいるのだろうと疑った。
酔っている振りをしながら疑っていたら、予想外の言葉が一松の口から発せられた。
驚きながらもノってみた。
すると俺も好きだよ、と言われた。
一松の狙いはこのやり取りだったのだろうか。
そう思うと一松が可愛すぎてたまらなくなった。
同時に恥ずかしさが込み上げてきて何となく寝た振りをした。
一松は俺の頭を撫でてから出て行った。
つまりあいつは俺のことが好きなんだろうか。

「うわ顔真っ赤じゃねえか!どんだけ飲んでんだよ!とっとと働けよクズ!」
「いやお前も働けよ!」

顔が熱いのは酒のせいではないのだけれど。
さてこれから一松に素面だったと暴露して、それからどうしようか。




-end-
実はどちらも素面でした。
一まちゅはドラマCDネタです。
こそばゆい感じの話でした。
ありがとうございました!
2016529

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