Story
□悲劇の終わり
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何が起こっているのだろう。
目の前にはキミの姿があった。
キミを飲み込みそうな位の強き光が、バチバチと火花を放ちながら、黒き闇を消してゆく。
奇跡が、起ころうとしている。
そして僕にとっての悲劇が始まろうとしている。
キミの絹みたいに繊細で雪みたいに真っ白な肌からは血が流れ、
直ぐに壊れてしまいそうな細い身体はもうボロボロだった。
『――――!やめろ…!お願いだから…!やめてくれ…!』
僕がそうやって叫んでも、キミの耳には届かなかった。
―――――――――考えろ、僕はどうすればいい?
―――――――――――考えろ、キミを救うためには
――――――――もう無理だ。
―――――――――いや、諦めるな。
色んな言葉が頭を過る。
何かやらなければいけないのに
僕の身体はまるで金縛りにあったかの様にビクともしなかった。
『―――』
『…!』
いつもと変わらない、鈴を転がすような声で
光に飲み込まれるまでの数秒間
キミは僕にこう言った。
『――――――キミのことが好きです。
今まで本当にありがとう―――――。』
そう言ったキミの笑顔は、
残酷な位
美しい笑顔でした。