恋乱倉庫
□不機嫌な団子【才蔵】
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「才蔵さん…?」
「何」
「怒ってます?」
「…かなり」
才蔵さんを怒らせてしまった。
簡単な買い物だからと何も言わずに出掛けた城下で、運悪くガラの悪い連中に絡まれてしまったのだ。
才蔵さんが助けてくれて、事なきを得たけど、帰ってきてからと言うものずーっと機嫌が悪かった。
「どうしたら許してくれますか?」
折角一緒に居るのにこれ以上、気まずいままなんて寂しくて、恐る恐る隣に居る才蔵さんを見上げてそう聞いてみた。
「…。」
才蔵さんは不機嫌そうに私を横目で一瞥し、冷たく一言言い放つ。
「団子」
「あっ!はい!!」
慌てて傍に置いてあった団子の乗った皿を才蔵さんに差し出すと、またしても不機嫌そうな声が聞こえてきた。
「…口移しで」
「!」
それを聞いて目を丸くする私に才蔵さんは無表情のまま視線をこちらに向ける。
「出来ないなら別に良いけど」
「そっ…そんなことっ…ないですっ!!」
これで機嫌が直るなら!と私は意を決して団子をパクリと一粒口に含んだ。
しかし、いざ口移しをしようとすると想像以上に恥ずかしい。
「…っ…」
だが恥ずかしがっている場合ではない。
恥ずかしい気持ちなんて一瞬で終わるのだから、と才蔵さんの肩に手を掛けて、そっとその唇に口に含んだ団子を舌で押し込んだ。
「んっ…!」
途端、ぬるり…と団子ごと私の舌を絡め取る才蔵さんの舌にビクッと身体が震えた。
そのまま才蔵さんは団子を口に含むと、もしゃもしゃと咀嚼してこくんと飲み込んだ。
そして、ぺろりと唇を舐めてそれを見守る私を見下ろした。
「お前さん、やっぱり単純だよね」
「へ…」
「くくく…っ…ごちそーさん」
ニヤリと笑う才蔵さんの笑顔で、漸く端からこれをさせる為の演技だったのだと分かり、カーッと焼ける程に顔が熱くなった。
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