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◆あめだま 

「浩志、手、出して」

半信半疑で差し出した手のひらにころ、と転がった小さな粒。覆いかぶさっていた小さな手のひらの影が少しずつ消えて、それが何なのかと姿を確認するのに時間はかからなかった。

「…飴?」
「うん、昨日ノートば貸してくれたやろ?それのお礼」

そんなの気にしなくていいのに。そう口を開く前に彼女はそれじゃ、先生に呼ばれてるからと去っていく。残されたように突っ立つ俺の手のひらに乗った小さな飴玉がやけに大きく見えて、気付けば俺は、輝くような笑顔の持ち主の後ろ姿を目で追っていた。

「…お礼、」

オレンジと黄色で包まれたその紙包を解いて、口に運ぶ。広がったのは、柑橘系の香りだった。




(レモン味なのに、こんなにも甘い)





2016/02/04(Thu) 05:09 

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