悪役ノ手下ノ”ユメ”

□ハッピーヴィランズ
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初めて綺麗と言ってくれた方。
その方に付けて頂けるだけで至福。
胸を張って、このお方の美に少しでも自分が入っているのなら……








本日、夫人様のご友人らしき人がお見えになった。
名を、マスターV様。
その方は夫人様と何やらお話しているご様子。
自分は……生憎、小棚のジュエリー入れに入れられてしまいました。



すると、夫人様が徐に立ち上がり自分を手に取り……


「では、これをお願いします。」


「ほぉ、中々美しいブローチですな。
……ですが、宜しいのですか?」


「えぇ、このブローチは私の美しさを引き立ててくれています。
ですから、私の一番の執事に。」


何のことだか分からなかったが、夫人様の"一番"になれるだけですごく嬉しかった。


「分かりました、それでは……」


V様が手をかざすど、段々視界が暗くなっていった。


























「……ぃ………さい…起きなさい。」


聞き覚えのある声が聞こえ、優しく体を揺すられる。

………………体を揺すられる?


『っ!』


自身に体は無いはず。
勢いよく起き上がると……夫人様とV様が自分を見下ろしていた。



『ぁ……え、あの…』


「おぉ、これはこれは!
実に美しいリクルーターではありませんか!」


V様が大声を上げながら喜んでいらっしゃる。


『り、くるーたー?』


「えぇ、貴女は今から私のリクルーター。
私のことは分かりますか?」


『……トレメイン、夫人。』


「今日からマスターとお呼びなさい。」


『は、はい……』


そこまで話して、改めて自身の姿を見た。
元々ブローチだったのが、今では人間の姿になっており、服はフリルがあしらわれた燕尾服。
胸元には、ブローチの色と同じ懐中時計があった。


「……バトラー・シーラ。
これから貴女の名前です。」


夫人様は笑わなかったが、名を付けていただけただけで嬉しかった。


『っありがとう、ございます……マスター。』


ふじ……マスターの足元に膝をつき頭を垂れる。


「ゴホン……えぇ、少々宜しいですかな?
本来ならば、女性ヴィランズのリクルーターは男性のはず。
ですが、貴女様のリクルーターは女なのは何故でしょう?」


V様が自分を凝視している。
すると、マスターが自分の肩に手をつき……


「私のイメージが不満ですか?」


「っあ、いや失敬!
そ、それではMs.シーラ、君は今日からヴィランズリクルーターとして、働いてもらう。」


何も知らない自分に、V様は丁寧に説明してくださった。

このヴィランズの世界は、今人手不足で困っている。
その問題を解決する為に、自分達ヴィランズリクルーターが人間の世界に行き、ヴィランズの世界に合う人材を連れてくるらしい。


『……事情は良く分かりました。
ですが、自分一人では少々不安です。』


「あぁ、それには心配ない!
君"以外"にもリクルーターはいるからね!」


『自分……以外。』


「兎に角善は急げだ!
夫人、シーラを連れて行っても宜しいですかな?」


「……偶には帰ってくるのですよ?」


『マスター…………』


自分は、マスターに一礼してV様と屋敷を出た。

これからリクルーターとしての、自分の生活が始まる。
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