成り代わり的MY LIFE
□星霊魔導士は笑わない
3ページ/4ページ
「………これは、狼、なのでしょうか…?」
ハルジオンにやってきて、少し路地裏を歩いていた私の目の前には、薄汚れたグレーの毛並みの狼のような生き物がぐったりと倒れていた。
「血だまり…怪我をしているのでしょうか…!腹部に裂傷…人為的なもの?まだ息はあるから、手当てをすれば助かるかも…よし」
さげていた小さめのバッグから応急処置をするために救急セットを出す。
小さいからたいしたものは入っていないが、止血程度ならなんとかなりそうだ。
「血は止まった…あとは増血丸さえ飲んでくれれば…」
狼の口を少しだけ開け、増血丸を入れて水を流し込むと、ちゃんと飲み込んでくれた。
「これで大丈夫でしょう…放置しておく訳にはいきませんが、魔法屋にも行かなければなりませんし…」
悩んでいると、狼がぴくりとほんの少し動いた。
そのままうっすらと目を開けると、じっと私を見つめた。
「狼さん、応急処置しかできませんでしたが、たぶん動けるようにはなっている筈ですので、人間に何かされない内にお逃げ下さい」
そう言って、汚れてごわごわした毛並みを撫でて、くるりと振り向いた。
その私のズボンの裾を、くいっと引かれた。
「……狼さん、一緒に来ますか?」
「グルル……ガゥ…」
力なく、しかし嬉しそうに尻尾を振りながら狼さんは頷いた。
ああ、とりあえず川を探して洗ってあげなくては。
バシャバシャと狼さんの汚れた身体を冷たい川の水で洗う。
だいたい洗えたかな、と思って川から抱き上げると、なんとグレーだった毛並みは白銀に変わっていた。
「狼さん、貴方はとても綺麗な毛並みをしていたのですね。そうだ、貴方の名前はシロガネにしましょうか」
「ガウッ」
ぶんぶんと尻尾を振って鼻を擦り寄せるシロガネを撫で、立ち上がる。
「さあシロガネ、ハルジオンの魔法屋へ行きましょう。ただシロガネは大きな狼さんですし…まあ、大丈夫でしょう。行きますよ」
私が歩き出せば、シロガネが隣に並んで歩き出した。
「シロガネ、くれぐれも捕まらないように気をつけるのですよ。狼は珍しいですからね」
「ガウガウ!」
返事をしたシロガネは、処置をして身体を洗いさっぱりしたからか、会った時よりも元気になっているようだった。