番外編・リクエスト

□そばにいたい
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どれくらいそうしていただろうか、かなり長い間そこに2人して立ち尽くしていたはずなのに、周りには人っ子一人いなかった。

ああ、そっか。彼は天下の風紀委員長様だった。


「ふふ、恭弥くん、学校行こう?遅刻しちゃうよ?」

「まだ大丈夫だよ。なんなら僕がバイクで送る」

「あら頼もしい。でもやっぱり早く行こうよ。2人で屋上でゆっくりしたいな。授業は…うーんたまにはサボっちゃいたいな」

「だったら授業が始まるまでは応接室にいようか。そこなら教師は誰も来ないよ。僕が適当に話は通しておくけどね」

「ふふっ流石は天下の風紀委員長様。なんでもできちゃうね」


本当はサボったりしちゃダメだけど、今日はこの(精神年齢的に)年下の恋人と、ゆっくりと過ごしていたかった。


「それにね、恭弥くん。恭弥くんだけに言っておきたいことがあるの」

「僕に?分かった。屋上で聞くよ」

「うん、ありがとう」


貴方にだけは、言いたいの。
貴方にだけは、嘘をつきたくないの。
貴方にだけは、知っていてほしいの。
貴方にだけは、なんにも隠したくないの。
貴方にだけは、否定されたくないの。

私が前世の記憶を持つなんて言ったら、貴方は何と言いますか?

気持ち悪いって、言われてしまうかな…

この手を離されてしまうかな…

そんなのは嫌だけど、私は貴方に、一つも隠し事はしたくないの。


「ねぇあゆみ」

「っあ、なぁに?」

「君が何を考えてるのかは分からないけれど、僕は一つだけ言っておくよ」

「恭弥くん……?」


ふと、真剣な瞳(メ)で見つめてくる恭弥くんに、つい目を逸らせなくて見つめ返す。


「たとえ君がなんであろうと、僕は君が好きだ。君が君であるから、沢田あゆみであるからこそ、僕は君を好きになったんだ。君の、そばにいたいんだよ」

「恭弥、くん…」


なんだか、プロポーズみたいだよ、それ…
私が言うことなんて、全部バレてるみたいに思えちゃう…

涙が、私の瞳に膜を張る。


「もう、恭弥くんってば、ずるいよ…これじゃなんにも、言えなくなっちゃう…」

「それでいいんだよ。君は、何も言わなくていいんだ。辛そうな顔をするくらいなら、黙っていていい。だからほら、笑ってよ」


親指の腹で優しく優しく涙を拭われる。
手、おっきくなったなぁ…


「ふふ…私も、この先ずっと、恭弥くんのそばにいたいよ…」

「どこにも行かせないよ。僕は君を手放さない」


ああ、なんて幸せなんだろうか。

こんな幸せが、ずっとずっと、続いてくれれば良いな…
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