Repatriate

□飛べ飛べ飛べ
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体の傷は深くなくほとんど次の日には塞がっていた。
ある朝に目が覚めると横には母がいた。

「・・・かあさん・・・?」

一般人の入室を城戸司令が許可を出したらしい。

8年経った今も変わらない姿は時の流れを感じさせず近界での8年が無かったような気さえもする。

「起きたの」

「修は?」

「学校へ行ったわ。」

「・・・あー・・・そ、か。」

母は多くは語らない。昔からそうだった。

「あなたは昔からそうだった。」

「え?」

「あなたが何かを私越しに見たりしてたのは知っていたわ。修も同じように勝手に行動して」

何も言えない。母さんの言うことはそのとおりだった。過去視の事も成長するにつれて言えなくなった。

「・・・・ごめん」

チラリとこちらを見る母さんはどこか疲れたようにも見えた。

「・・・もう私は行くわ。元気ならいい。」

「母さん・・・・!」

扉へ近づいた母さんを呼び止めた。
ゆっくりとこちらを振り返る。

「・・・・た、ただいま!」

母さんが目を瞬かせた。

「・・・おかえり」

ガラッ

すぐに扉から出たが、母さんの口元が少し笑ったような気がした。


それから二時間ほどして看護師さんが検温に来た。特に問題もなく、今日にでも退院できるとのことだったが実家の方の準備もあるのでそれはどうにか遅らせたい気持ちもある。
早く実家へ帰ってゆっくりしたい気持ちもあるのだが8年も離れていてしまっては、ホームシックすらも起きなくなった。

昨日修が自分が使っていた教科書や参考書をこっちに持ってきたので読んでおこう。
こっちは小学校で止まってしまっている勉強。
全くわからない。なんだXって。なんだYって。なんだ円周率って。なんだこれ。国語や理科はいいとして算数がさっぱりだ。元々算数なんて嫌いなんだ。やる意味がわからない。

などと思っていると扉をノックされる。
担当医かと思い、返事をすると入ってきた人物に驚愕した。

「き、ど司令さん・・・!?」

入ってきたのは城戸司令。名前は以前修が話した。

「そのままでいい。単刀直入に聞こう。君は、黒トリガーを持っているとのことだが」

「!・・・これだけは渡しません。この命に代えても」

城戸司令は椅子に腰掛けた。

「分かっている。それは迅から聞いた。だが、交換条件だ。
大規模侵攻では、こちらの指示に従ってもらう。」

「・・・そういうことですか・・・拒否権は・・・無いようですね。
わかりました。しかし向こうも大規模なのでおそらくいくつかの黒トリガーを投入するでしょう。隊長のトリガーは厄介です。トリオンに作用し、触れたものをキューブにします。今は・・・そいつしかわかりません。が、ご参考までに。」

「・・・助かる。それを元に────」

そう会話をしていると外から大きな音が鳴り響く。

ヴーーーーーッヴーーーーーッ


「!!」

「・・・来たか」

「城戸司令・・・」

「先程、医師から君の容態は聞いた。」

「なら、」

「出てくれ。これが本部へつながる無線だ。指示は忍田本部長に従え」

*
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