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□3.5
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ドンッ
と銃声が路地裏に響きわたる。
男がゆっくりと濡れた地面に倒れ込む。
パシャっ
水が跳ね、水溜まりに男の血が流れ出し赤く染まる。
周囲には数人の男女が目の前の男のように倒れ、赤く染まっている。
中心に立つ外套を纏った人間は全員が息絶えたことを確認し、路地裏を去る。
外套は少し離れたところで燃やし、灰と化した。
「…またか」
手に馴染む銃。
普段なら取れない硝煙の匂いも雨に打たれ流される。
今では射撃の時に手に伝わる衝撃にも慣れたもので、標準すらズレない。
「…ごめんなさい…迅…」
逃げられない彼女は、姿を隠し、国の人間に従う。
いつか、彼に見限られるだろう。
私の未来が見えないって言うのは、彼に殺されるからなのだろう。
殺されるのなら、彼に、彼の手で。
贖罪のチャンスなどあるとは思わない。
それほどの人間を殺めてきた。
あの男は、どれだけの人間を殺させるのだろうか。
疲れた。
ごめんなさい。ごめんなさい。
「惡」である事は変わらない。逃げられない彼女は、心を殺し、人を殺める。
人を殺めることへの、躊躇も、罪悪感も、どこに忘れたのか。
雨の中の銃声
*