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二人は幾度も会う度に次第に打ち解け、待ち合わせをせずとも、桜の木の下で会うようになっていた。
勿論、レインは報告のためにも早く来ることもあるのだが。
「…この辺、あまりゲート開かないんだね。毎回何もないし…」
「確かになー。でも一人じゃダメだぞ。何があるか分かんねーから」
と迅は口が酸っぱくなるほど彼女へ何度目かの忠告をする。
「分かってるよ。何回も迅くん言うんだもん」
と返事をし、レインは上を見上げる。
桜はほとんど散り、もう葉桜へとなりかけている。
「…桜、ほとんど散っちゃったね…もう、葉桜だ」
──────もう、会えない?
本来、桜を見に来たと言っている手前、桜が散ったなら別の場所で報告をする必要がある。
足がついてはいけない。転々と形跡を消しつつ移動するべきだ。
結局、レインは一度も情報を聞き出せずにいた。
どこかで、迅に心を許していることを感じていた。
そんな時
─────「好きだ」
突然迅がそう言う。
目を見開き、思わず迅を見る。
彼女の目を見返す迅の瞳は真剣そのものだった。
「…え…?」
「…桜が散りきったら、もう会えないと思った
俺には未来が見える。でも、お前の未来は見えなかった」
「未来…?」
その言動に、レインはサイドエフェクトかとアタリをつける。
「だから、最初は守らないとって思ったんだ。お前の未来が見える未来はないかって。最低かもだけど、自分の能力の幅を知るためにレインを利用した。だけど、今は違う。
いや、正確には、守りたい理由が変わった。」
そこで言葉を切ると、改めて迅はレインを正面から見る。
「好きだ。レインが。お前は゛桜゛を見に来てる。なら桜が散れば、会うことはなくなる。だから今しかないと思った」
レインは迅が真剣にいうので口を挟めない。
しかし、彼女の返事を促すかのように迅が沈黙する。
──────好き、なのだろう。私も…
と考えるも自分は、この世界の人間でないことを思い出し俯く。
「私は…「近界民っていうことは気にするな」…え…!?なんで…!?」
迅に近界民だと言ったことはない。
そもそもボーダーである彼にいうなど自殺行為だ。
「お前、向こうの世界の人間だろ?結構こっちのことをしっかり知ってるみたいだけど、ちょいちょい抜けてたしな。それに、俺は向こうにも行ったこともあるし、近界民にいい奴がいることも知ってる。だから、俺はひとりの人間として、レインが好きなんだ」
─────私はなんて馬鹿なのだろう。私は「惡」なのに、彼の思いを嬉しいと思ってしまう。
「…私も…好き…でも…私は…「関係ないっていったろ?」
「お前がこっちに来た理由は今は聞かない。俺は、お前が好きなんだ」
「…好き、私も、迅くんがすき…!」
とレインはポロポロと涙を零す。
「おっおいおい泣くなよ〜」
と迅は苦笑しレインを抱きしめた 。
春に出会い
恋に落ちた
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