operation!

□非公開模擬戦
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ここまでの24戦中三雲の勝ち星はない。

「掴んだって…何を掴んだっていうんですか?」

「さあ?それはわからないわよ
彼の頭の中は彼にしかわからない」

ブワッと突如淡く光るものが訓練室内に充満する。

「これは…」


通常銃手は最初に設定したふたつの弾丸を固定の弾速、射程、威力で放つのだが、正隊員にあがれば新たに選択肢が増える射手。
射手は状況に応じて威力重視で大玉を放ち一撃で敵を仕留めることも、細かく分割し射程、弾速を早くして繊細に敵に当てることでトリオン供給機関を破壊することも、その弾丸のすべてを調節することができるのだ。

三雲はこれを利用し超低速の弾速0.1、威力70、射程29.9で放つことで風間のカメレオンの使用と動きを制限したのだ。

「なるほどね。でも「カメレオンがなくても風間さんは強い、ですよね?」あらら取られちゃった。
当然よ、攻撃手ランキング2位、個人総合3位、A級3位部隊の隊長なのよ?」

その言葉の通り風間はスコーピオンで弾丸を全て切り落とす。
その動きには無駄がなく何万とある動きの中から瞬時に最善策を選択しているようだった。

三雲は近づいてくる間に手元にキューブを生成する。
動きを制限して大玉で向かい撃つのかと、木虎が考える。

風間がとうとう三雲に接近したとき

「スラスターオン!!」

ゴォッとシールドモードで風間に突撃し風間を押し返す。

「!?」

その威力に風間は押し返すことも出来ず、されるがまま後ろへ後退する。
背後には沢山の先程の散弾。
背中からそれを浴びれば当然攻撃が通りトリオン体が破損される。

思わず背後にシールドを張り、守る。
その間スコーピオンで三雲を切ることはできない。
とうとう風間は壁際へ背を打ちつけられると反撃しようとするも、三雲は風間のいる箇所を壁を底辺に丸くシールドを張り、閉じ込めた。

「閉じ込めた…!」

シュンッと丸く穴が空く。

「アステロイド」

と風間を閉じ込めゼロ距離でアステロイドを放ち煙が立ち込め、二人の姿は見えない。

しばらくして煙が晴れるのそこには首から刃が見える三雲の姿と伸ばした掌よりスコーピオンを伸ばしている風間。

『トリオン供給機関破壊!三雲ダウンッ!』

苦い顔をした三雲がいた。

「惜しかったわね…」

と少し残念そうに呟く木虎が

「いや、そうでもないみたいよ?」

未だ覆われた風間の左肩から下は全てなくなっていた。

『トリオン漏出過多!風間ダウンッ!』

このダウンにより結果
25戦中
24-0-1という結果に終わる。

「風間さんと引き分けるなんて…」

「勝ってはないけど大金星だな」

「これだから戦いってのは何があるかわからないのが楽しいのよね!」

出てきた風間と三雲にそう呟く木虎と烏丸。
そして笑う奏。

「オサムやったじゃん」

「…やったのかな?」

と遊真と三雲がパンッとハイタッチをする。

「うちの弟子が世話になりました」

階段の上から風間にそう言う烏丸に

「烏丸…そうか…お前の弟子か」

とつぶやくと

「最後の戦法はお前の入れ知恵か?」

と気になっていたことを訊くと

「いえ、俺が教えたのは基礎のトリオン分割と射撃だけです
あとは全部あいつ自身のアイデアですよ」

と正直に答える。

「どうでした?うちの三雲は」

変にオブラートに包まず率直な感想を言うであろう風間の言葉はいつも後輩にとって良い刺激であり、逆に厳しい言葉を言いつつも彼はきちんと伸ばすべき点も評価する。

「…はっきり言って弱いな」

キィィンとトリオン体から生身に戻り言う。

「トリオンも身体能力もギリギリのレベルだ。
迅が推すほどの素質は感じない

…だが、自分の弱さをよく自覚しいて、それゆえの発想と相手を読む頭がある。
知恵と工夫を使う戦い方は、俺は嫌いじゃない
邪魔したな三雲」

率直な言葉。
玉狛でも訓練生の頃、遊真に出会った当初も言われ続けた『弱い』という言葉に続けられた評価。烏丸の指導では本当に基礎のトリオン分割と射撃、そして実践で使えるもののみを教えられ戦術などはまだ触れていない。
変に完成度の高い戦術指南などをして三雲の考えの方向を固定させるのは良くないという指導方針は合っていたのだろう。

階段を上がると

「あれ?結局おれとは勝負してくんないの?」

と問いかける遊真に立ち止まり視線だけを遊真へ向ける。

「…勝負?お前は訓練生だろう
勝負したければこちらまで上がって来い」

とだけいい、歩を進めた。

「さっすが蒼也ねェ…
鼓舞と評価と的確なアドバイス
早く後輩指導にも回ればいいのに」

「風間さんが大忙しですよ。
攻撃手上位陣で指導できるのなんて風間さんくらいですし」

「うーん…そうか…
(にしても、珍しいわね…蒼也が敢えて確実なフルガードをせずにカウンターを狙うなんて…)
…でもホントにすごいことなのよ。蒼也と引き分けるなんて」

改めて彼を見る奏。

「え?」

「三雲くんは桐絵と戦ったことあるかしら?」

「い、いえ、小南先輩は空閑の師匠なので…」

「じゃあ空閑くんならわかるかしら、桐絵は攻撃手ランキング3位なの」

「ふむ、じゃあカザマさんはコナミ先輩より強いの?」

「うーんポイントが蒼也の方が上っていうだけで実際はほとんど変わらないわね。
理詰めの蒼也と火力で押し切る桐絵では戦い方も違うから。
上位になればなるほどその差はほとんどなくなる。」

「ほうほう」

「もちろん蒼也だって指導を兼ねて模擬戦ランク戦もすることはあるけれどほとんどの場合スキを見つけたらすぐに攻撃する。
読み勝つ事なんて早々ないわよ」

「…普段の風間先輩であったら勝てなかったってコトですか?」

「そう、だからこそこの引き分けはとても大きいし、すごいことなの」

思わず「まぁ最後のものは理詰めの蒼也には通じてもうちの弟弟子や桐絵には通用するようなものではないけど」という言葉は飲み込んだ。

「そうだな、最後の一戦はいい読みだった」

「烏丸先輩の指導のおかげです」

と笑う三雲の背後で木虎が黒いオーラを放つ。

「けど一回読み勝つために20回負けてたら普通はアウトだぞ」

という言葉に木虎が嬉しそうに胸を張る。

「そうよ!あんまり調子に乗らないことね!」

「いや、なんであんたが嬉しそうなのよ…」

その時──────

「三雲くん、大変だ、君たちのチームメイトが…」

と、嵐山が呼びかけた。


非公開模擬戦


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