司令の戦闘人形
□人形のわがまま
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「はぁ?なに。どうしたのお前…」
と出水は質問する。
「…なんでもない…」
「嵐山さん、近界民を庇った事をいずれ後悔する時が来るぞ。あんたたちはわかってないんだ。家族や友人を殺された人間でなければ近界民の本当の危険さは理解できない。そいつも何を思ってるのか分からないものだな!
近界民を甘く見ている迅はいつか必ず痛い目を見る。そしてその時にはもう手遅れだ」
その言葉にフェルミリアはさらに俯いた。
「甘く見えるってことはないだろう。迅だって近界民に母親を殺されてるぞ?」
「…!?」
知らなかった真実に三輪が驚愕する。
「5年前には師匠の最上さんも亡くなってる。親しい人を失う辛さは良くわかってるはずだ。それにフェルだって「嵐山さん」…フェル…」
フェルミリアが顔を上げて三輪を見返す。
「自分で言う。
私は、12年前に、近界民である母から玄界に捨てられました」
「…!?」
「元々近界に未練もなかったから良かったけど、死にかけた所を城戸さんに救ってもらった。それから城戸さんは私の絶対」
「…ならば、なぜ逆らう!所詮は近界民ということだろう!!」
「…分からない。なんで、あったこともない近界民の黒トリガーを守ったのか…でも、間違ってたとは思わない…それに、近界民は私を殺しかけた。私を要らないと、捨てただから、必ず、母を見つけて、復讐する…帰る」
フェルミリアは言い終わると本部へ向かい家を伝う。
「一体どうなっとるんだ!」
鬼怒田の怒号が響く会議室前にフェルミリアは立ち竦む。
「迅の妨害!精鋭部隊の潰走!だが問題は何よりも忍田本部長!なぜ嵐山隊が玉狛側についた!?なぜ近界民を守ろうとする!?…それに、フェルもだ!
まとめてボーダーを裏切りつもりか!?
フェルも所詮は近界民だったということか!?」
「『裏切る』…?議論を差し置いて強奪を強行したのはどちらだ?やりたくないと言う子に強要しようとしたのは誰だ?」
「!」
「フェル。入ってきなさい」
ガチャッ
「フェル!!」
「お前…」
「…おいで。大丈夫だ」
「…命令違反、すいませんでした。城戸司令…」
「…なぜ玉狛についた。お前も近界民は憎いだろう」
「城戸さん!」
フェルミリアは俯いたまま言う。
「分からない…でも、しないとって思った…」
「フェルには私が頼んだ。だが、もう一度はっきりと言っておくが私は黒トリガーの強奪には反対だ。ましてや相手は有吾さんの子…これ以上刺客を差し向けるつもりなら、次は嵐山隊ではなくこの私が相手になるぞ城戸派一党」
忍田がフェルミリアの横に立ち言い放つ。
「フェル部屋へ戻っていろ」
「…え」
「聞こえなかったか?部屋へ戻っていろ」
「や、だ…」
「なに?」
フェルミリアはバッと顔を上げ城戸へ走り寄ると服の裾を掴む。
「す、てないで…!!」
奥歯を噛み締めフェルミリアが城戸を見上げると、そんなフェルミリアを見て、城戸がため息をついた。
その溜息にビクッと肩を揺らす。
「…何を言っている。そんなことを心配してたのか」
「…?」
「その程度で捨てるわけ無いだろう。さっさと部屋へ戻って休め」
淡々と言い切る城戸にフェルミリアは軽く目を見開いた。
「…ん」
と安心したのか返事をし出入口へ向かう。
「…だから言ったろう。心配ないと」
と忍田が頭を撫でる。
「ん…ありがと…」
とだけ言うと会議室を出ていった。
人形のわがまま
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