司令の戦闘人形
□人形のわがまま
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「…いやだ…」
「…フェルミリア・クロイツ。命令だ」
「…いくら城戸さんの命令でも聞けない」
黒トリガー奪取任務を城戸がフェルミリアに命令されていた。
「命令だ。反論は許さん」
「…もう、知らない。城戸さんは、やっぱり近界民が嫌いなんだ。私も嫌いなんだ…」
「…はぁ…フェル…自分が何を言っているのか分かっているのか」
城戸が米神に指を当てフェルミリアを睨む。
「…分かってる。わがままだっていうのも、分かってる。ごめんなさい…」
目を伏せ、扉を出る。
フェルミリアは廊下を俯きながら歩く。
初めて城戸へ逆らった。
「…」
「…?フェル?」
「…忍田さん…」
「どうした?」
「…分からないの…城戸さんは、私を拾ってくれて、育ててくれて、絶対なのに。
嫌なの。近界民だからって。私も同じ近界民で、利用価値がなかったら、私からもトリガー取っちゃうの?」
「…どういう事だ?」
忍田は顔を険しくさせフェルミリアを見つめる。
「玉狛の、黒トリガー、取ってこいって。でも、嫌だって言ったの。どうしよう…忍田さん…捨てられたら、どうしよう…」
表情は変わらない。それはいつも通りなのに、目はいつもとは違い、黒く陰っている。
「大丈夫だ。心配するな…ちょっと待っていろ」
とフェルミリアを安心させるように目を合わせ頭を撫でる。
「迅か。嵐山隊は到着したか?」
「!…嵐山さん、行ってるの?」
忍田が微笑みきちんとフェルミリアの目を見つめる。
「フェル、行ってくれるか?」
「え…?」
「もちろんこれは、命令ではない。お前のやりたい様にすればいい。これは、私の頼みだ。玉狛の近界民の父親は私が昔、世話になった。数え切れない程の恩を受けた。お前も向こうで会ってるかもしれないな」
「…私、行きたい…」
と忍田を見つめるもフェルミリアの手は震えている。
城戸に逆らう恐怖からか、城戸に捨てられるのでは、見放されるのではという不安からか。
「大丈夫だ。心配するな。城戸さんはそんなことでお前を見限らない。信じろ」
と再度頭を撫でた。
「…ん…じゃあ、行ってきます…」
と言うと廊下を走り連絡通路へ向かった。
「…人形…か…(いい傾向だな)」
多くの人間がフェルミリアを゛司令の戦闘人形゛と呼んでいる。
彼女は城戸直属の戦闘員として隊員達とは別の立場に立って、非常時をメインに活動し、防衛任務の助っ人が殆どの活動であった。
その彼女が自分の考えで動いているのだ。
12年見てきたが、そんなこと初めてで、忍田は喜ばしく思った。
城戸がどう思うかは、忍田はなんとも言えないが…
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