司令の戦闘人形

□人形のわがまま
1ページ/5ページ



「…いやだ…」


「…フェルミリア・クロイツ。命令だ」


「…いくら城戸さんの命令でも聞けない」

黒トリガー奪取任務を城戸がフェルミリアに命令されていた。

「命令だ。反論は許さん」

「…もう、知らない。城戸さんは、やっぱり近界民が嫌いなんだ。私も嫌いなんだ…」

「…はぁ…フェル…自分が何を言っているのか分かっているのか」

城戸が米神に指を当てフェルミリアを睨む。

「…分かってる。わがままだっていうのも、分かってる。ごめんなさい…」

目を伏せ、扉を出る。
フェルミリアは廊下を俯きながら歩く。
初めて城戸へ逆らった。

「…」

「…?フェル?」

「…忍田さん…」

「どうした?」

「…分からないの…城戸さんは、私を拾ってくれて、育ててくれて、絶対なのに。
嫌なの。近界民だからって。私も同じ近界民で、利用価値がなかったら、私からもトリガー取っちゃうの?」

「…どういう事だ?」

忍田は顔を険しくさせフェルミリアを見つめる。

「玉狛の、黒トリガー、取ってこいって。でも、嫌だって言ったの。どうしよう…忍田さん…捨てられたら、どうしよう…」

表情は変わらない。それはいつも通りなのに、目はいつもとは違い、黒く陰っている。

「大丈夫だ。心配するな…ちょっと待っていろ」

とフェルミリアを安心させるように目を合わせ頭を撫でる。

「迅か。嵐山隊は到着したか?」

「!…嵐山さん、行ってるの?」

忍田が微笑みきちんとフェルミリアの目を見つめる。

「フェル、行ってくれるか?」

「え…?」

「もちろんこれは、命令ではない。お前のやりたい様にすればいい。これは、私の頼みだ。玉狛の近界民の父親は私が昔、世話になった。数え切れない程の恩を受けた。お前も向こうで会ってるかもしれないな」

「…私、行きたい…」

と忍田を見つめるもフェルミリアの手は震えている。
城戸に逆らう恐怖からか、城戸に捨てられるのでは、見放されるのではという不安からか。

「大丈夫だ。心配するな。城戸さんはそんなことでお前を見限らない。信じろ」

と再度頭を撫でた。

「…ん…じゃあ、行ってきます…」

と言うと廊下を走り連絡通路へ向かった。

「…人形…か…(いい傾向だな)」

多くの人間がフェルミリアを゛司令の戦闘人形゛と呼んでいる。
彼女は城戸直属の戦闘員として隊員達とは別の立場に立って、非常時をメインに活動し、防衛任務の助っ人が殆どの活動であった。

その彼女が自分の考えで動いているのだ。
12年見てきたが、そんなこと初めてで、忍田は喜ばしく思った。
城戸がどう思うかは、忍田はなんとも言えないが…


*
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ