隣の席は

□第5話
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あぁ、もうどうしたらいいのかわからない。
雨宮は俺のことが、その、恋愛的な意味で好きで、もう友達ではいられないと言う。
俺のことを好きなままそばにいたいと。

ほんとならもう一緒にはいない方がいいのかもしれない。
だって雨宮の気持ちに応えられる自信は無いから。雨宮を傷つけるだけかもしれないから。
雨宮のことを思うなら離れた方がいいのかもしれない。

でも俺だって雨宮と一緒にいたいよ。
話しも合うし、一緒にいると落ちつく。恋愛的な意味ではないけど、雨宮のことが好きだ。
雨宮はもう俺の中では大きな存在なんだよ。

どうしたらいいの。今俺が雨宮のお願いを断ったら、雨宮はまた1人になって、また誰かを好きになることを諦めて。
…俺からも離れていってしまうのかな。

そんなのは嫌だ…っ。雨宮の気持ちに応えられないくせにずるいかもしれない。
それでも雨宮を失うなんて嫌だったった。

「雨宮…、俺も雨宮とは一緒にいたいよ。雨宮の気持ちには応えられないけど、雨宮にそばにいてほしい。
もう友達としてじゃなくてもいいから緒にいようよ。
俺のこと好きでいてくれてもいい。逃げないし、避けないって約束するから…」
「…っ」

雨宮の息をのむ気配がして、恐る恐る顔を上げて雨宮を見た。視界が揺らいでいたから雨宮の顔なんてよく見えなかったけど。

これでいいのかわからない。また何か間違えてるのかもしれない。
でも、雨宮と離れるとゆう選択肢はどうしても出てこなかったんだ。

「榎木…っ」

ふいに雨宮の手が俺の頬に伸びてきて、ビクッとして瞬きをすると、思いのほか近くに雨宮の顔があるのがわかった。

「っわ、ち、近いね。びっくりした…」

そのままの距離で熱のこもった瞳の雨宮に見つめられて、頭がくらくらしてきそうだった。

「榎木、逃げないでくれてありがとう。チャンスをくれてありがとう」
「…ん?チャンスって?」

どうゆうことかわからなくて、首を傾けると。

「だってそうでしょ?自分のことを好きだって言ってる奴と一緒にいるってことは、そうゆうことでしょ?」

…へ?

「俺、絶対榎木に好きになってもらうように頑張るからね。覚悟しててね」

雨宮がすごく嬉しそうに目を細めた。

ちょ、ちょっと待って!俺はそこまで深く考えてなかった。
これって雨宮にチャンスをあげたことになるのっ?

あわあわと俺が顔を真っ赤にしていると、目の前の雨宮がニヤリと笑った。
あ、雨宮のそんな顔今まで見たことないし…っ。

「ま、待ってよっ。俺、雨宮のこと好きになるかなんてわかんないんだよ?」
「いいよ、別に。もう隠さなくていいのなら、頑張って榎木のハートを射止めるだけだ」
「…っ」

わわわ、やっぱり俺は間違えたのかもしれない。今俺は猛獣に狙われた小動物のような気持ちになった。

「榎木大好き。俺のこと好きになってもらえるように頑張るから早く好きになってね」
「うっ、」

雨宮が愛おしそうに俺の髪を撫でてくるが、俺は石のように固まった。

少し前までの緊張感溢れる空気はどこに行ったのか。一転して変わったこの甘ったるい空気に逃げたくなってしまう。

「榎木…可愛い。すごく可愛い。あぁ、やっとちゃんと触れた」
「待ってよ、俺なんて可愛くもなんともないよ…っ」
「え、可愛いよ?榎木がこの世で一番可愛い」
「!?」

な、なんか、なんか…っ、

「雨宮、キャラ変わってない!?いつもの雨宮らしくないよ…っ」

雨宮の変貌ぶりに混乱して思わず涙目になるが、雨宮はニコッと笑うだけ。

「そうかな?でもごめんね、これがほんとの俺だよ。榎木が思ってるようないい奴じゃないかも。
今までは気持ちを無理矢理抑えてきたけど、もう我慢はしないよ」

…っ。そんな…っ。

「あ、そうだ…ごめん。ほんとの俺、と言えば実はもう一つ隠してたことがある」

何何っ、まだ何かあるの…っ?
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