隣の席は

□第6話
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あれから。雨宮が素顔で登校するようになってから何日ぐらい経っただろうか。

相変わらず雨宮と仲良くなりたくて寄ってくる生徒達は大勢いるが、全く取り付く島のない雨宮の対応に諦め始めたのか少しはマシになってきた。

だからと言ってモテなくなったわけではない。
雨宮はこっちが見ていても冷や冷やする程素っ気ない態度を取るが、そんな冷たい対応も女子からすればむしろクールでかっこいいらしい。

…女子ってよくわかんない。

まぁでも雨宮のそんな頑なな態度のおかげでか、昼休みや放課後もほとんど誰も追ってこなくなったのだ。

だからこうして今日も2人でご飯を食べられている。と言っても教室では落ち着かないから中庭で。

それはいいんだけど。

「榎木。キスしていい?」
「だーかーらっ、駄目だってば…っ」

近づいてくる雨宮の顔から慌てて自分の顔をそらした。

どうしたものか、最近では2人きりになると雨宮のスキンシップが激しくなるようになったのだ。

「やっぱり駄目…?」
「あ、当たり前だろ…っ。恋人でもなんでもないのに…」
「はぁ…駄目かぁ」

雨宮がしゅんとすると俺の手を取って握りしめてきた。

「ち、ちょっと…っ、雨宮…」

俺はとゆうと、そんな雨宮にいつまでたっても慣れなくて、翻弄されっぱなしだ。
ボッと熱くなった顔を無防備に雨宮に晒すだけ。

「ふふっ、榎木可愛いー。なんでそんなに可愛いの。あぁ、早く恋人になりたいなぁ」

雨宮は甘くとろけるような顔でそう言った。

「か、可愛くなんてないから!」

もう、ほんとに雨宮は俺なんかのどこが可愛く見えるんだよ。雨宮の目は一体どうなっているんだ。

雨宮に取られた手をさりげなく外そうとするが、余計にギュッと握られた。

「ねぇ、どうしたら俺のこと好きになってくれる?もっともっと意識させたらいいかな?
榎木の頭の中を俺だけで埋めたいのに…」

そう言って雨宮が俺の指に自分の指を絡ませると、チュッと口づけた。

「や、止めろって…っ」

もう俺の頭の中は十分お前でいっぱいなのに…。恋愛的な意味では無いが、それだけは確かだ。

「榎木が俺のこと好きになってくれるの待ってるから。俺はずっと榎木のこと好きだから」

祈るように瞼を閉じる雨宮。

「あ、雨宮…」

こんな俺をそんなにも想ってくれるのはきっと雨宮しかいない。
このままではいけないってわかってる。男だとかは関係なく、いつか答えを出さなきゃな…。

そう思って雨宮の整った顔を見つめていると、目を開けた雨宮と目が合った。

「ん、どうしたのそんなに俺の顔を見つめて。あ、キスしたくなった?」
「ば…っ、違うってばっ」

更に顔を真っ赤にした俺を雨宮が楽しそうにクスッと笑った。

はは…雨宮ほんとに性格変わったな。いや、今までは隠してきただけで、これが元々の雨宮なんだろう。
俺に気持ちを伝えてからはすごく活き活きとしている。
迫られて困るし戸惑うけど、そんな雨宮を見るのは素直に嬉しい。だって素でいられるのが一番だもん。

「雨宮、なんか最近は前よりも楽しそうで良かったよ」
「っ、そりゃあ楽しいよ!
榎木のそばにいられて楽しいに決まってる。好きな子に気持ちを伝えることができるなんて、こんなに嬉しいことないよ。今が人生で一番幸せだ」
「はは、そっか。それはよかった」
「うん。恋人になったらもっと楽しいと思うよ。楽しみだね、榎木」
「は、はは…」

うっとりと見つめられてもなんと応えればいいのか。

雨宮と恋人かぁ…。やっぱりまだ想像できない。

こんな調子で雨宮への気持ちにちゃんと向き合えないまま日々は過ぎていったのだった。
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