隣の席は

□第3話
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3人で昼飯を食べるようになってもうすぐ2週間経つだろうか。
俺達は今日も机を寄せ合って、たわいもないことを話しながら昼飯を食べていた。

この2週間で雨宮とは最初の頃より大分気軽に話せるようになった。好きなテレビや映画の話し。それに意外と漫画も好きらしい。雨宮のことが色々知れるのは純粋に嬉しかった。

そしてなんと雨宮は1人暮らしをしていることがわかった。これには実家でぬくぬくと暮らしている俺と寛之にはかなりの衝撃だった。
しかも弁当も自分で作っているらしい。
全然知らなかったからほんとに感心してしまった。でもどうりで雨宮ってなんだか大人っぽいと思ったんだよな。

それに。雨宮は寛之ともどこか気が合うみたいで、弁当の時間なんかはいつも会話が弾んで楽しかった。
だから俺は3人でいられるのが嬉しくて仕方がなかったんだ。

それなのに。

「えっ、寛之…今なんて?」

箸で掴んでいたおかずが、弁当箱にポトリと落ちる。

「だから、俺はこれからは昼は彼女と一緒に飯食うから、明日からは良介と雨宮の2人で食べてよ」
「…っ、なんで急にそんなこと」

寛之がさっき突然昼飯はもう俺達とは一緒に食べないとか言い出したんだ。

「…なんだ山本、もしかして俺に気をつかってるのか?」

雨宮が寛之を見ながらボソッとそう言った。

「えっ?雨宮に気をつかってるって何…?どうゆうこと?」

困惑して寛之に詰め寄るが、寛之は曖昧に笑うだけで。

「いやいや、俺は別に、」
「わかんないよ、寛之。なんでいきなりそんなこと言うんだよ。今までずっと一緒に食べてたのに…」

1年生の時から今まで昼飯や昼休みはずっと寛之と一緒だったのに。寛之がなんで急にそんなことを言い出したのかわからなくて不安になる。

「んー、まぁ言ったのは急だったけどさ、実は結構前から昼は一緒に食べたいって彼女に言われてたんだよね」
「そ、そうだったの!?」

そんなこと初めて聞いた。

「うん。嘘じゃないよ。なんだったら彼女に聞いてくれてもいいし」
「知らなかったよ…。それならそうだと言ってくれたら良かったのに」
「いや、だってそうしたら良介が1人になっちまっただろ?」
「…!」

そうだったのか。寛之は彼女と昼飯を食べたかったのに、俺のことを心配して…。俺が1人になるから付き合ってくれてたんだ…。
どうしよう、全然気がつかなかった。そうだよな、昼休みぐらい彼女と過ごしたいよな。

俺は自分のことばっかりで寛之のことを何も考えられてなかったんだとわかって、罪悪感が押し寄せた。

「ごめん、寛之。俺が…」
「ばーか!何泣きそうな顔してんだよ。まさか変なこと考えてるんじゃないだろうなー。
言っておくけど、彼女から言われてたのは事実だけど、俺がお前と一緒にいたいからいただけだからな」
「寛之…」
「でも今は雨宮もいるし、昼ぐらい俺が抜けて寂しくないだろ?」

確かに今は雨宮もいるけど、俺は寛之とも一緒にいたいよ。でも寛之は彼女とも一緒にいたいだろうし。
…すごく寂しいけど仕方がないんだよな。

しばらく考え込んだ後、俺はようやく頷いた。

「うん…わかったよ。寛之は彼女と食べていいよ。今まで邪魔してごめんなさいって彼女さんにも謝っておいて…」
「ぶっ!なーに深刻な顔してんだよ。昼は別になるけど、それ以外は何にも変わんねーし。
俺の彼女はいい子だから、良介に邪魔されたなんて思ってもないし」
「…うん」

それでもやっぱり寂しくて、つい泣きそうになるのを眉根を寄せて堪えた。

「とまぁそうゆうことだから。雨宮、良介のことは頼んだぜ」
「あぁ」

寛之が雨宮に目配せをすると、雨宮がコクッと頷いた。
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