隣の席は

□第2話
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ー席替えのあった次の日の朝。

俺は今日は朝起きた時から気持ちが落ち着かず、学校に着いてからもずっとそわそわしていた。

あぁ、雨宮を昼飯に誘うだけなのにこんなに緊張するなんて。
うまく言えるかな…。
昨日は楽しみで仕方がなかったけど、段々もしかして迷惑なんじゃないかとも思えてきた。

雨宮が昼飯は一人で静かに食べたい派だったらどうしよう、なんて色々考えてしまう。

うーん、と唸って教室の中に入れずにいると、丁度登校して来た寛之に肩をポンと叩かれた。

「おはよう、良介」
「っあ、おはよう寛之…」
「こんなとこで何やってんの?教室入ろうぜ。あ、昼のこと雨宮に聞いとけよな」
「う、うん。断られなかったらいいんだけど…」

昨日とはうって変わって気弱になっている俺を励ますように寛之が笑った。

「大丈夫だって。雨宮ともっと仲良くなりたいんだろ?頑張ってみろよ」
「う、うんっ」

寛之に励まされてちょっとだけ勇気が出る。

そうだよな、昼飯誘うだけでこんなに緊張して…。俺は乙女かよって話しだ。
断られても気にしないようにしよう。友達に無理強いしたら駄目だもんね。

教室内に足を踏み入れると、席には既に雨宮が座っていた。

…よし。とにかく話しかけよう。

「おっ、おはようっ、雨宮」
「おはよう」

雨宮の座っている席まで来ると、思い切って挨拶した。
緊張で少し声が上擦ったけど、雨宮は気にせずに笑いかけてくれた。

うわぁ、挨拶が返ってくるだけで嬉しい。俺、あの雨宮と挨拶できる仲になれたんだ…っ。

ほわほわと嬉しい気持ちになる。

うん、今なら言えそうだ。

「あのさ、雨宮」
「うん。何?」
「よ、良かったら今日、昼飯…一緒に食べない?」
「…え?」

俺の誘いに、雨宮はきょとんと目を丸くしている。

「あっ、いや、ひろ…山本も一緒なんだけどさ。山本も雨宮と話してみたいって言ってるし。よかったら、なんだけど。3人で食べない?」
「…」

あれ、返事が無い…。

「あっ、1人で食べたい…の?」

やっぱり迷惑だったのか、と不安になって語尾が自然と小さくなる。

「でも俺は雨宮と仲良くなっていきたいなと思って…。い、嫌かなぁ」

雨宮の反応がどうしても気になって、おずおずと雨宮の顔を覗き込むが。

「…っ」

思いっきり雨宮に顔をそらされた。

や、やっぱり駄目か…。覚悟はしてたけど、ちょっと凹むなぁ。
でも無理強いしないって決めたもんね。

「ごめんね、雨宮。じゃあまた、もし気が向いたら…、」
「いいの?」
「…え?」

今雨宮の方からボソッと声が聞こえたような…?

「一緒に食べても…いいの?」
「!もっ、もちろん!一緒に食べたいから誘ってるんだよ」

わっ、これってOKかな?
すごく嬉しくて自然と顔が緩んだ。
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