オリキャラのお話し
□眠れない姫は夢を見る
1ページ/1ページ
月が見上げる位置に登り、皆が静まり返ったころ。
ルツは珍しく目がさえていた。
きっといつもより長い時間昼寝をしてしまったせいだろうと、検討はついていた。検討がついたところで、眠れないことには変わりない。
今日はどうやら新月に近いようで、窓から差し込む月明かりがなく、部屋もとても暗い。
そのかわり夜空は満天の星空だった。
窓越しなんてもったいないと、ベッドサイドにかけてあったローブを引っ張り体に巻き付けて外へ出た。
ベランダの手すりに手を置いて目の前に広がる星の海を見上げる。
空気はひんやりしていてとても気持ちがいい。
息はまだ少し白いが、これからきっと暖かくなっていくだのだろう。
……ふと、昔見たおとぎ話を思い出す。
誰かが、このベランダの下から声をかけてくれはしないものか…
さっきまで冷え切っていた体が急に熱く、赤くなる。 一人で何を考えているのか? これは昔々のおとぎ話で、そんなことはない。
とはいっても、やっぱり期待はしてしまうもので、そろりそろりとベランダの下をのぞき込んでみる。
……そんな簡単に物語は始まらない。見えるものはいつもの変わりないただの庭だ。
溜息をひとつつき、静かに部屋に戻る。
物語のような王子様が、迎えに来てくれないかしら?
などと考えるのも、きっと満天の星空に充てられてしまったに違いない。
冷えたローブをかけなおし、暖かかったベッドへもぐりこむ。
大きくなったら、きっと…。
恋心も知らない小さい姫は眠りにつく。
物語の素敵な夢にあこがれながら。
眠れない姫は夢を見る。 /ルツ