オリキャラのお話し

□もえるは過去の
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暗い

そんなに楽しくない話。
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真っ白な世界に耳障りな音が鳴り響く。

人々の声が聞こえた気がした。




フェードアウトするように音が遠くなる。
耳なりのする中、ゆっくりと目を開けると真っ白な視界に色がついていく。


足下でなびいている新緑
遠くまで広がる青い空
建物の少し黄色くなった石レンガに、木々の深い緑



ここは…







小高い丘に立っているようで
遠くに見覚えのある青いとんがり屋根に、石レンガを使った建物が見える。
その周りには、街が広がり、さらにその回りは山に囲まれた自然豊かな土地だった。

この場所には見覚えがある。
そう、私がよく知った場所。
風が通り抜け、さわさわと葉と葉の擦れる音だけが聞こえる
風に流された肩まで伸びた銀の髪を片手で抑え、視界を遮らないように長い耳にかける。


あの青い屋根の建物は私の家
回りの街は大好きな国…
森には沢山動物がいて




あぁ…、知ってる…


この場所を私は知っている




みんなは?



みんな は どこ…


鳥の声も
人の姿も、音も声も
葉の動く音しか聞こえない

足をさわる草の感覚はしっかりあるのに。


不安が押し寄せる
妙な静かな景色に、なつかしさもある。

ここが、私たちの国…?






遠くの空が、突然目映く光る
しっかり見据えると、一筋の光が真っ直ぐ街へ降りる
ゆっくりと堕ちた光は
遠くの街へと降り立ったその刹那
目映く、目の眩む光と強風を放った

両腕で風と光から守るように目の前で交差させて、ぎゅっと目を閉じる
再び音が消えて、キンと耳鳴りが起こった。




少しのあいだ、そうしていた気がした。





風がぬるりと熱く頬をさわり、その感覚にゆっくりと目を開けると


さっきまで見ていた空も

街も

森も


すべて




真っ赤に 燃え上がっていた








真っ赤な世界に耳障りな警報が鳴り響く。

人々の悲鳴が聞こえる。

足下でなびいていいた草は、時が止まったようにピタリと動かず
青い屋根の建物は所々大きな穴が開いて、何とか原型を留めているが、次崩れたら続けて全て崩れそうなほど、黒く焼け落ちていた。

街の方では人々が逃げ惑っている。
ひとつの方向ではなく、四方八方散り散りに。
銀の髪を持つ人々は燃える火を写してか、髪も真っ赤になっていた。
火事なら街の外へ向かうのに、どうして…

耳に届く悲鳴に混じり

やめて
たすけて

と、たくさんの声が聞こえる


聞きたくない
もうやめて


どうして?
どうしてこんなことに…?


銀色だった赤い髪に混じって、黒い髪が飛び交う
銀の髪を本当の赤に染めながら街を飛び回る。

知らない

こんなの見たくない



私が望んだのは、こんな世界じゃない。



力なくその場へ立ち尽くしていると
横へ見覚えのあるローブを着た銀髪の初老の男が立っていた

こちらを向くと
この状況を楽しむようにニヤリ笑い
私に手を伸ばす




怖い
やめて…

やめて…!


その場から逃げて、見慣れた花畑だった場所へ向かう。
いつも清んだ空気のその場所は淀み、花は枯れ、蝶は地に堕ちていた

見たくない…

両手で顔を覆い、膝から崩れる

こんなことを望んだの…?
違う、私はこんな結末は望んでない

どうして…
どこで間違えたの?

煙の臭いで、鼻が麻痺する
目の前は溢れ落ちる涙で歪む


認めたくない

でも
原因は確信してる。
この惨事の原因はただひとつなんだと


近づく足音に、背筋が氷り咄嗟に立ち上がる

振り向いた先には
原因が"いる"


先ほどまでの銀髪はところどころ赤く染まり、まとっている高価な衣服にも同じように、鮮やかな赤や黒ずんだ赤がまばらに付着している。

原因も、きっと街を歩いてきたんだろう。




それこそが証拠であり、確証であり、原因だ。




なんど繰り返してもこの国を救えないのなら、私はここから変えていくしかないのだろうと。
しっかりと立ち、目の前の原因を見据えた。


少しでも期待を勝手にしてしまった自分を悔やみ

それでも、やっぱりどこか違うと思ってしまう自分が嫌で

こぶしを握り締めて、初めて、声をあげる




きらい

嫌い

大っ嫌い



お父様 なんて 大っ嫌い !









何度繰り返しても、ここまでは大きく変わらない

何度繰り返したって、助けた代わりに、誰かが犠牲になるの


その原因がわかっても、それを変えられるだろうか


国を治め
上に立ち
国民の支持のある原因は


私じゃ…


私じゃ……まだ       ない。





まだ、      ない。




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昔の話を引っぱり出してきて色々伏せつつ描いてるけれど、実際めっちゃ自分の中では大事な話。
ルツやティース、クーロの世界はそんなに平和じゃないんだっていう。

ルツが火や蝶が苦手なのはここからきてる。

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