オリキャラのお話し

□名も知らない、知っている君
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ざあざあと雨が降る。
周りはぼやけて目を細めてもしっかり見えない。

鮮明なのは、一歩先をゆく長いコートの人。 腰から上がはっきりせず傘に隠れて、ぬれたコートの裾と靴が見える。

知らない人…。

いえ、私はこの人を知ってる……?

一緒に、でも一歩後ろを歩いて進むのは、なんだかもどかしい。 出来たら…、隣に…。

そう、知ってる。 だけど、いつ会った人だろう…?

じっと見つめる視線に気がついたのか、コートの人は立ち止まり、ゆっくり振り返る。

傘を持つ手は少し濡れていて、髪は…金髪だろうか…?雨のせいか色がはっきりしない。

髪に隠れて顔が見えない。でも、笑ってる?

ああ、知っている。 私はこの人を。
声をかけて良いでしょうか…? 声が聞きたいのです…
だけど、声をかけたら、あなたは消えて、いなくなってしまいそうで……。

口をつぐみうつむく。
ふっと頭に手を置かれ、そのまま頬へ滑り落ちる。ほのかに頬が赤くなるのを感じた。
やっぱり、声をかけたい!あなたと話をしたい!

ばっと視線を上げると、そのままめまいがして後ろに吸い込まれるように倒れた。








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ざあざあと雨が降る。

目を開けると、そこは毎朝見ている部屋の天井で

夢から醒めたことに気付かされる。


……そのまま思い出せない夢なら良かったのに。
ふう、とため息をついて腕を額にあてる。


知ってる。私は知ってる。
名も知らない、あなたのことを………。


声をかけたら、夢でも答えてくれたでしょうか…?
名も知らないあなたのことが、とても気になって眠れない。
もう一度、夢を見たいのに。




名も知らない、知っている君/ ティース

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