薄桜鬼(現代・オリキャラ)

□壬生警察署 生活安全課 2
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リンリンー

電話に表示されたのは“佐藤太郎”という日本に何人いるのか考えたくなるような安直な名前。
「千鶴ちゃん、ちょっとごめん。」
「気にしないで。」
学生時代から幾度も繰り返してきたやり取りで、お互い気にすることもなかった。
W受話Wをタップして、太郎さんからの電話に出る。
「お待たせ…ごめんなさい、今お昼を食べているところだったの。」
話しながらもさっさと席を離れて、窓を開けてベランダへと出て行く。
「雪村……もしかして今のは…………」
斎藤さんの戸惑った様子が、窓越しでも伝わってくる。
声は聞こえなかったけれど、唇の動きは読みやすかった。
「雪花ちゃんの彼氏さんです。お昼ご飯の時とかはよくかかってくるんですよ。学生時代からのお付き合いで、すごくマメな方なんです。」
千鶴ちゃんがにこやかに答える。
「なっ……な、なんと…そんなに長い付き合いなのか……」
カッ!と目を見開き、固まっている斎藤さんの様子に、噴き出してしまいそうになる。
『ーーおい、聞いてんのか?』
スピーカーから聞こえてくる、不機嫌な声。
「聞いてますよ、太郎さん。」
『うわ、お前、相変わらずその名前でオレ達のこと登録してんのかよ。』
「何かご不満でもありましたか?」
『そんな明らさまな名前で登録するんなんて、彼氏だって言ってもぜってー冗談だと思われるぜ。』
「そういう自分だってロクなやつじゃないじゃない。」
『んなことねーし、W愛Wちゃんだなんて、素敵な名前じゃねーか。』
「あなたが愛とか死ねるんですけど。」
絶対にどっちもどっちだと思った。
とにかく話が脱線しまくっていたので、要件を尋ねる。
『いけね、忘れるところだった。ファイ、今夜お前はWSWでお勤めの日だろ?カイの情報によると、どうも今夜はヤツがお出ましになるらしいぜ。』
「ふーん…それはまた随分と珍しい話だね。」
そう言ったところで、ふと自分に向けられた視線に気づく。
真正面から注がれたそれは、千鶴ちゃん達と食事している山崎さんのものだった。
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