薄桜鬼(現代・短編)

□旅で逢えたら
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「つ、疲れた……」

この日のために連日の残業に耐え抜いた。
今日は心置き無く旅をするはずが、後輩のミスのために駆り出され、宿に到着したのが19時過ぎーー
それでも、前から楽しみにしていた温泉宿に来れただけマシだ。
クタクタのボロボロ状態だけど、化粧もハゲて酷い有り様だけど、チェックインが被ったキラキライケメンスーツサラリーマン集団に、「げ、ボロ雑巾でもここまで酷くないよ」と言われたけど、それもこれもこの至福の時の為だと思えば、全然OKなのだ!

それにしても、あの集団はモデルか俳優かというくらいにイケメン揃いだった。
背の高い赤毛の人は女性の扱いに慣れているのか、スーツケースを部屋の前まで運んでくれた。
集団の中で恐らく一番歳下の彼は、「よっぽど疲れてんのな。これ飲めよ。」とお茶をくれた。
ちなみに”ボロ雑巾以下“とバッサリ斬ってくれたのは、背の高い茶髪の彼。
そんな彼を真っ先に窘めてくれたのは、比較的小柄で短髪が印象的な彼と長めの紺の髪の彼。

「沖田君、失礼だろう。」

「なぁに、山崎君。思ったこと言っただけだし。」

「それが問題だということだ。」

「山崎の言う通りだ。総司、きちんと謝れ。」

「はじめ君まで説教するの?はいはい、ごめんね。」

「あ……はい。」

お決まりの流れなのだろうか。
心はこもっていないが、とりあえず謝罪してもらい、私も気にしていなかったのでそれで話は終わった。
互いの部屋が近いこともあり、部屋に行くまでの間、互いのことを話した。

「雪花は○○で働いてんの?俺たち、同じビルの壬生商事で働いてんだ!」

「えっ!そうなの?!」

歳若の彼は平助君というらしい。
なんと彼らは、私の勤める会社と同じビルに入っている壬生商事の社員達たった。
超実力主義ーー出身校ではなく、てめぇの実力でのし上がれ!という超スパルタで有名で、生き残れるのはこれまた超がつくほど優秀な人間ばかりだと評判の会社だ。
そして同僚の話では、これまたまた超がつくほどイケメンばかりが集まっているとか。

(確かに、イケメン揃いだわ……)

じっくり眺めなくても、イケメンと判定できるくらい、彼らはそれぞれ個性的で素敵だった。
そう言えば、壬生商事との合コンが!!とか騒いでいた子もいたような。
私にもお情けで声が掛かったが、彼女達が合コンに行くための仕事を押しつけられて結局行けなかったんだっけ。
まぁ、誰も相手にされずに撃沈したようで、それはそれでいい気味だと思った。

(こんなイケメン達と口が聞けたなんて、ラッキーだな)

なんてくらいにしか思ってなかった。
それ以上関わることがあるなんて思っていなかったし、まさかあんなことになるなんて……
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