薄桜鬼(現代・オリキャラ)

□壬生警察署 生活安全課8
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この香り…安心する……
わたし…この香りを知ってる……
誰だったっけ……
あぁ…そうだ……これは…この香りは………




「うぅっ……」

頭がガンガンする。
風邪でもないのにこんな状態になるなんて初めてだ。
薄眼を開けてみれば、外はまだほんのりと暗くて、5時か6時くらいだろう。

とりあえず水でも飲も…
モゾモゾと這い出て部屋を出ようとしたら、ガチャリと扉が開いた。
「おっ!やっとお目覚めかよ!!
お前、結局ベロベロに酔っ払ったじゃねぇか!


……っつうかファイ…お前、いつまでソレ着てるつもりだよ。」
そこにいたのはカッパで、こっちは頭がガンガンしてるというのに、お構いなしでまくし立ててきた。
…っていうか
「ソレって何のこと?」
やっとのことで声を絞り出したと言うのに、カッパは完全にバカにした目つきで見下ろしていた。
「自分の服、見てみろよ。」
「ん…?」
服がどうしたっていうの…って!?
「な、に、…コレ……」
脱がずに寝たくらいで…いや、確かに服は脱いでなかった……けれど私が一番上に羽織っていたのは、黒い男性もののコートだった…けど、どうして裏表が逆なの?
「何これって、お前がアイツから奪ったやつだろうが!」
カッパが益々バカにしてくる。
奪ったとか、アイツとか、何のこと……?!
必死で思い出そうとしたけど、どうして私が持っているのかわからない。
でも…待って……昨日私を送ってくれたのは…
「やまざき…さん…?」
その名前を呟いた瞬間、カッパの顔が明らかに不機嫌になった。
「あぁ、そうだよ…」
ん?何でそもそも、カッパがここにいるの…?
声を出すのも億劫で目でカッパに訴えれば、嫌々説明してくれた。
「どーせ酔っ払って帰ってくると思って待っててやったんだよ。
そしたら案の定酔っ払いやがって、おまけに男に背負われてやんの…」





『ファ……おい!雪花!!』
駆け寄っていけば、お前はすっかり夢の中。
ニヤニヤして、それは嬉しそうにしてたぜ。
『ったく…だから気をつけろって…』
『君が伊賀君の恋人か?』
お前を背負っていた男は、俺を見てすぐにそう言った。
『あぁ、そうですが?』
男は、しばらく俺をじっと見ていた。
『そうか…』
納得したような、していないような、いや、あれは……まぁ、そんなことはどうでもいいか。
とにかく、俺はお前を引き受けると伝えた。
で、背負われていたお前を、抱えようとしたんだ。
でもな…
『ん………ゃぁ……』
ぐっすり寝ていやがったクセに、奴の背中から引き剥がそうとした瞬間に、奴のコートを握りしめて離れるのを嫌がったんだよ。
『おい、雪花!さっさと離れないと、この人も帰れないだろ!』
揺すって声を掛けてもちっとも離そうとしねぇ。
それどころか、益々コートを握りしめて、奴にしがみつく始末だ…
もういい加減に力づくで剥がしてやろうかと思ったら、奴が笑いながら言ったんだ。
『コートを布団とでも思っているのかもしれない。
せっかく暖まったのに、冷えたら可哀想だな。』って。
いったん屈んでコートのボタンを外したと思ったら、そのまま脱いでしがみついてたお前をくるりと包んだんだよ。






「ーで、俺はそんなお前を引き取ってここまで連れてきたの。」
そこまでを説明してやったら、ファイは目を白黒させて、かと思ったら真っ赤になって黙り込んだ。
それはまるで恋するなんとか、みたいで、それがなんだかモヤモヤして…
だから、俺はコイツには教えてやらなかった。



『良い夢を……』
お前をコートに包みながら、まるで愛を囁くようにアイツが声を掛けていたこと。
そのまま抱きかかえたお前を俺に渡す時の瞳が、こっちが悪者の気分になるくらい哀しそうだったこと。
『お兄さん……』
別れ際、コートを握りしめながら、ふにゃりとしまりのない顔をしたコイツを見て、アイツも同じくらいしまりのない顔をしていたこと……
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