薄桜鬼(現代・オリキャラ)

□壬生警察署 生活安全課
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壬生警察署、生活安全課ーー

私、伊賀雪花と雪村千鶴ちゃんの配属先だ。

千鶴ちゃんとは警察学校で知り合った仲間で、その頃からの付き合いだ。
初めて見た時、この子が警察官??と驚いたけれど、持ち前の頑張りで乗り越えてきた。とは言え、やはり危険の伴う捜査の第一線に立つにはあまりにも…という訳で、犯人と格闘するとか、危険な捜査とは無縁のここへ配属となった。その中でも、『一般防犯係』といういわゆる防犯・犯罪対策を担うのが、私たちの仕事だった。

交番での勤務を終えて壬生警察署への配属が決まった際に、近藤所長、土方副署長が悩みに悩んで決めたらしい。
とは、後になって沖田刑事から聞いた話だ。

「千鶴ちゃん♪」
「千鶴〜!!」
「千鶴、お疲れさん。」
「雪村、ご苦労さま。」
「千鶴ちゃんっ、頑張ってるな!」

配属されてからというもの、彼女はまさにアイドル状態だ。控えめでありながらも、芯が強くて、一生懸命頑張る姿ーーそれに加えて、同じ女でも守りたくなるくらいに可愛いときたものだから、そうなるのも必然だろう。
ただし、その可愛さと正直な人柄故に、第一線には立てないのだがーー

兎にも角にも、そんな彼女に想いを寄せたり、アプローチをしている人は一人や二人ではなかった。
そして、この人もそんな千鶴ちゃんファンの一人ーー

「雪村君、教えて欲しいことがあるのだがー」

「あっ、山崎さん。お疲れ様です。今回はどうなさったんですか?」

「○○町で立て続けに事件が起きているんだ。どうも犯人は地理に長けているらしくてな。次の犯行を食い止めるためにも、あたりをつけたい。君達ならば、犯罪が起こりそうな死角を把握しているのではないかと思ってーー」

山崎烝ーー

優秀な人間が集まっていると評判の捜査一課所属の刑事だ。
特に彼は、斎藤さんと共に、土方副署長の右腕、左腕とも噂されている。同時に、実は内部の人間の監視役だ、とも。

とは言え私からすれば、そんな彼も千鶴ちゃんに惚れているただの男の一人だ。
暇さえあればやって来る同じ一課の沖田さん達とは異なるが、それでも上手く理由を作っては千鶴ちゃんに接触している。

細身の銀フレームの眼鏡をかけた姿は、元々涼やかな目元と相まって彼の印象をさらに冷たく見せている。彼が来ると、課の温度が二、三度は確実に下がっているが、千鶴ちゃんに対してだけはその表情を和らげているのは気のせいではない。

「○○は住宅地で人が多い反面、他の地域からの転居者が多く、夫婦共働きの世帯ばかりなので、日中は意外と危険かもしれません。」

「……なるほどな。わかった。君の資料は丁寧に調べてあって分かりやすい。また助けてもらえると有り難い。」

「いえ、そんな!お役に立てて嬉しいです。いつでも来てください。」

真っ赤な顔で俯く千鶴ちゃんを、やはり優しそうに見つめる山崎さん。これもまたお馴染みの光景となりつつある。

(ま、どんだけ頑張っても、千鶴ちゃんの心はもうあの人のモノなんだけどね〜)

所詮部外者の私は、こうして千鶴ちゃんにアプローチする人間を観察するのがすっかり楽しみになっていた。

「ついでにもう一つ聞きたいのだが、××は最近どんな様子か知っているだろうか?」

「××……ですか?」

「あぁ。君も知っていると思うが、あそこのSという店は、違法な取引など犯罪の温床となっているらしい。
Sだけでなく、他にもいくつか怪しい店があると噂があってな…」

「××は、安全課としても目をつけている地域の一つなんですが、表向きは合法的な経営を行っているようで、中々実態把握が出来ていないんです。」

「そうか…いや、時間を貰ってしまってすまなかった。では。」

そう言ってサッと立ち去るその後ろ姿は、一課の中では細身で小柄ながら、秘めた強さを感じさせるものがあった。
 

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