「プレゼント?」 「おう」 「……私の誕生日夏なんだけど」 大きな赤いリボンがついた箱を手渡してきた恋次は満面の笑顔を私へ向けていたが、どうしてこんなものを渡されるのかわからない私の返しにがっくりと肩を落としてしまった。 誕生日は半年前、隊の皆に盛大に祝ってもらったし、そのときに恋次からもしっかりとプレゼントを貰った。よくわからない独特なデザインの湯飲み茶碗だったけれど、嬉しそうに渡してくる姿が少しだけ可愛かったから今も勤務中に使っている。お茶を入れてくれる理吉くんは割らないように毎日必死なようだ。 それよりこのプレゼントは何なのだろう。昇格したわけでもないし何かめでたいことがあったわけでもない。黙ったままの恋次を横目に雪が散らつく窓の外を見て、やっと今日という日を思い出した。 「ああ、クリスマスか」 「うそだろお前、乱菊さんなんか昨日から変なカッコしてんぞ」 「うん、知ってる」 下着が見えてしまいそうなほど短い丈の赤と白のコスチュームを着た乱菊さんはサンタクロースとやらになったらしく昨日から色んな人にわけのわからないものを渡している。もちろん私のところにも来ては履かなくなったのであろうブーツを置いて行った。それと、お揃いの衣装。 「これね、置いてったの。乱菊さんが」 ペロンとそれを広げて見せてみれば恋次は髪の色にも負けないくらい顔を真っ赤にさせて片手で口を覆う。こういうのは彼氏の前でしか着たくないんだよね、と続けて畳み始めれば、その手を掴まれて顔を上げざるを得なかった。 「お、お前、彼氏とかいねーだろ」 「うん、だから着ない」 わざとらしく笑ってから可愛らしい衣装を畳み終えた。 恋次が私に気があることは知っている。もちろん私も彼のことを異性として好いている。だけど交際するとなる決定的なきっかけがなく、友達以上恋人未満のような関係がもう何年も続いている。後輩達には勘違いしているものも多く、乱菊さんや七尾さんには「え、まだなの」と冷たくあしらわれるのもしょっちゅうだ。それでも良いと思えているのは彼がこうやって会いに来てくれるから。口約束のような言葉の鎖で繋がらなくても、彼の隣にいられるだけで私は満足だ。 何度も何かを言いかける恋次はガタイのわりに可愛くて笑ってしまう。なに?と声をかければ、口篭りながら小さく声を出した。 「俺の前でも着られねーかよ」 「ん?んん?聞こえなーい」 「だぁ!俺の前でも着られねーのかよ!」 自棄になったような口ぶりで声を荒げた恋次に、私からは言うのが悔しくてずっと言えなかった言葉が今なら言える。 「恋次が私の恋人になってくれたら……着る」 目を丸くした彼を笑い飛ばして、「冗談とかじゃないからね」と付け足せば、さらに顔を真っ赤にしてコクリと小さく頷かれた。 乱菊さんに、あとでお礼をしなければ。 (じゃーん、どーよ?) せっかくだけど (これすぐに脱がせてもいいか?) ─クリスマス企画2015─ END (プリーズ ブラウザバック) |