「ねえ一角、あたし達ってほんとに付き合ってるのかな」 唐突にそんなことを言い出したのは三ヶ月前に俺が告白した相手で。 「あ?…てめー俺のあの恥ずかしいセリフ忘れたってのか」 「忘れてなんかないけどさ」 付き合って三ヶ月。 お互い席官ということもあって忙しく、確かに恋人同士らしいことなど一度もしたことがない。 いや一つもしたことがない。 サボれる時にサボって以前なら七番隊にいる明良の様子をこじつけて見に行っていたが今は弓親とどこかの屋根で寝てばかりだ。 「………」 「なんで黙んのよ」 「…変なこと言ってねーでさっさと戻れ」 珍しく十一番隊に来たと思えば書類を置いて下らないことを言ってくる明良にイラついて言葉を荒げた。 狙ってるやつは少なくなかった。 勝手に明良の話題が出てくることもあれば当たって砕けた隊員の自棄酒に付き合ったこともある。 そんなに人気がある女の顔を知らない訳にはいかないと出向いた先で名前も知らない女に一目惚れした。 それが明良だった。 初めは俺が一目惚れなんてするはずないと自分自身を頑なに制御していたものの無意識に足は七番隊へ向かうし耳は明良の話題になれば気持ち大きくなるしでいつの間にか認めざるを得なくなった。 「機嫌悪いね、一角」 弓親の声もどこか遠くに聞こえる。 だが確かに耳には入っていて俺は小さく舌打ちした。 機嫌悪くもなる。 初めて一目惚れして初めて告白なんてものをして初めて好きな女と付き合ってるってのに久しぶりに会って言われた言葉があれだ。 今まで付き合った女はいつでも抜けるからまあいいかと交際を求める言葉に承諾しあの台詞を言われれば切り離す。 面倒臭いことこの上ない。 だが今まで言われ続けた言葉を未だ一度も手を出したことが無い女に言われて機嫌が悪くならないわけがない。 ビビッてるわけじゃないがそれを言われたくなくて何もしなかったというのに。 惚れた女を簡単に切り離せるわけがない。 |