六番隊に任された虚討伐任務。あまりの多さに平隊員では手に負えないと報告が入り、席官と数名の十一番隊と共に意気込んで駆けつけ倒したものの、なかなか自分も手こずった。 がっつり傷をつくって戻れば、すぐに四番隊の救護詰所へと運ばれる。 それから2日。 傷も癒えてきて身体も大分軽くなってきた。 そろそろここを出てもいいんじゃないかと思う。 せかせか動く四番隊員を横目に廊下を歩いていたときだ。 「あれ?恋次?」 どれだけぼんやりしていたのだろう。気づけば左右どちらかにしか行けない。 前には壁。と、自分の身体の半分くらいの大きさはあるだろう箱を持った女。 久し振りに聞く声だ。といっても1ヶ月程度か。 おう、と右手を挙げて返事をする。 「暇なら手伝ってよ」 「暇じゃねーよ」 今挙げた腕が見えなかったのかよ、と続けると、きょとんとした顔で返してくる。 包帯巻いた腕が見えなかったのかと問うたつもりだった。 「暇な顔」 「暇そうな顔って言えよ」 暇なんでしょ?とまた問われれば、何も言えなかった。 腕動くんだったら手伝えってことか。ちくしょう。 「何でお前がここ居んだ」 ここ数日で怪我人だらけの四番隊詰所にどこからどう見ても元気そうなこいつが何故。 異動でもしたのか。何も聞いてねーぞ。 「誰かさん達が虚に散々やられて忙しそうなんだもん」 「だからって、お前十一番隊だろ」 嫌味を思いきりスルーして返す。手伝いなんかしてたら周りに何言われるかわからないあの隊だからこそ不思議でならない。 向こうでまた怒鳴り声が聞こえる。あと、悲鳴。 「副隊長が許してくれた」 ああ、なるほど。相変わらず自由な隊だ。 あの小さな副隊長に平隊員が頭が上がらないことも、席官でもないこいつが気に入られていることも以前から知っている。 そういえば、こいつなら何しようと許されそうだ。副隊長にそれを得なくても。 「あ、持ってくれるんだ」 ひょい、と箱を奪ってみれば意外と重い。 腕が震えるのも頷ける。 雛森並に小さい身体でどのくらい運んだのだろうか。 「こんなの男手にまかせろよ」 あ、プルプルしてたのバレたー?と眉尻を下げて笑う。 昔からそうだ。何でも我慢する。初めて会った日と同じ顔。 「だから恋次をつかまえたの」 「いや四番隊の男、」 「一応これでも更木隊だからね、力無いところなんて見せられないでしょ」 ああ、そうだ。そうだった。 こいつはこういうやつだった。 明良と出会ったのは、俺らがまだ真央霊術院に通っていた頃。 . |