企画

□【クリスマス企画2015秀徳高校バスケ部のクリスマス直前恋模様-緑間】カップルと高尾の絡み
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彼女の背中を押して数ヶ月。しっかりWCの応援に来ていた***さんは観客席から大声を上げていたと俺の恋人が言っていた。
何を聞いても逸らかす真ちゃんからは情報なんて得ることが出来ないから、課題の資料を探すために来た図書室で彼女とばったり会った今はチャンスかもしれない。うとうとしている図書委員を確認して声をかけると、「あ、高尾くん」といつもと変わらない笑顔を向けられた。


「***さんといるときの真ちゃんってどんなカンジ?」


カウンターから一番離れた椅子へ無理矢理座らせ、何気ない雰囲気でそう問うてみた。


「デレデレ?」

「ううん、デレデレにはほど遠いかな」

「じゃあツンデレ?」

「ツンデレってどういうの?」


目の前で首を 傾げる***さんはくりくりした大きな目を瞬かせる。今時"ツンデレ"を知らないのかと驚いたが、彼女はそういうのに疎かったと思い出せば納得せざるを得ない。説明するのも面倒だから「真ちゃんみたいなの」とだけ教えてやると、さらに首を傾げて眉根を寄せた。わからなくても人生で困ることは無いと言えばホッと胸を撫で下ろし、こんな女の子と真ちゃんが2人でいる空間はカオスなんじゃないかと思えてきてしまった。


「もうエッチしたの?」


次の質問はこれだ。明らかに奥手な真ちゃんが彼女といる時は俺の知らない一面を見せているのかもしれない、と相棒としては知っておきたい情報である。童貞だとは思いたくないがあの男の雰囲気からして嫌な予想は確実には拭い去れない。フィフティ・フィフティの予想で問うた答えは、食い気味に嫌な方だった。


「し、してないよっ」


やっぱりか、と思ってしまう自分に声を殺して笑い、心の中で真ちゃんに謝る。顔を真っ赤にした***さんはそんな行為事態が信じられないのか、それともそういうムードになった時のことを思い出してしまったのか、どちらかわからないがこれだけは言える。次は真ちゃんの背中を教えてやろう。


「ちゅーは?」

「……してない」

「手は握った?」

「うん、それはあるよ?」

「なんかすんげー健全なお付き合いしてんねー」


未だに顔を赤くしている***さんを見て真ちゃんが惚れたことに納得出来た。確かに彼女は可愛らしい。俺の恋人が言っていたように、本当にふんわりした性格だからR指定の会話なんてすれば金輪際話しかけることすら出来なくなりそうだ。だけど言葉を選ぶなんて面倒なことはしたくないから、とりあえず今日の部活では真ちゃんにコンドームだけ渡しておこう。そろそろアイツも我慢の限界かもしれないし、毎夜毎夜1人で抜くなんていつも自信たっぷりの真ちゃんにして欲しくないんだ。持っていたとしても関係ない。まだ経験が無いということを俺が知っているアピールだ。


「じゃあさ、真ちゃんと2人の時って何してんの?」

「……本読んでる、かな」

「へ?」


部活漬けの俺達に自由な時間なんてほんとに僅かだ。俺は部内に恋人がいるからほとんど一緒に居るようなものだが、真ちゃんは1人で居残り練までしっかりとやる。会えるのも学校以外で無さそうだというのに、2人きりの時間にやっていることが読書だなんて。


「え、ちょ、待って。2人で1冊の本読んでるとか?」

「絵本じゃないよ?」

「だよな」


恐らくその時は無言なのだろう。
何やってんだ真ちゃん、なんて口から出そうになったが、なんとか溜息だけで終わらせることが出来た。そうやって過ごすのが2人にとって落ち着くことならいいのかもしれないが、俺と一緒の時よりアイツが喋っていないのかもしれないと思うとまたも盛大な溜息が漏れてしまう。きょとんとした表情をする***さんの小さな頭を撫でると、擽ったそうに目をぎゅっと閉じて身を捩った。


「真ちゃんがこうやって頭撫でてんの見たことある」

「結構な頻度なのだよ」


彼女の頭に俺の手は乗せられたまま、背後から聞こえた低い声に恐る恐る振り返った。眼鏡の奥に見える目が明らかにこちらを睨んでいて俺の頬は引き攣ってしまう。「わぁ…」とただそれだけしか声は出て来なくて、さっと腕を引いて立ち上がった。


「高尾、何してる」

「真ちゃんの真似」

「死ね」

「ひでェ!」


そりゃあ大事な恋人に触れたのは悪かったかもしれないがただ頭を撫でただけのことだ。お前だってマネージャーの頬抓ったり無駄に頭撫でたりしてんだろ、と文句を言ってやりたかったが、心が広い俺は口を噤んだまま席を立った。


「もう***に触るな」

「へーへー」


課題のための資料を手に完全に寝てしまっている図書委員の元へ向かう。だけどすぐに後ろから声をかけられて、振り向けばふわりと笑みを浮かべた***さんが 手を振ってくれていた。


「高尾くん、また色々相談してもいいかな」


これは、あれだ。
俺が彼女を引き止めていたのではなく、彼女が俺を捕まえて一緒に居たことにしてくれるのだろう。真ちゃんが思いきり俺を睨んでいることが彼女にとっては心に閊えているに違いない。バスケ部スタメンの俺達コンビがギクシャクするのはマズイと、彼女は察しているのだろう。


「うん、……ありがとね、***さん」


彼女の肩を抱いてぐっと引き寄せた真ちゃんが、眼鏡を押し上げて溜息を吐くのが見えた。




(高尾に何の相談だ)

(真太郎くんとのこと)

(真ちゃん、あとで渡したいもんあっから。本のしおりにでも使ってよ)





END
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