企画

□【心情ソクラテス】ヒロインが海常バスケ部と絡む
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「黄瀬くんかっこいー」


惚けた顔でそんなこと言っているのは俺の幼馴染であり恋人、******だ。レイプ紛いの初行為の日から晴れて俺達は恋人同士となり、彼女も堂々と体育館へ練習を見に来るようになった。笠松がうざったそうに女子の集団を睨む中、彼女だけは此処にいることを許される。キャーキャー叫ぶこともなければ黄瀬目的でもないせいか、それともマネージャーがいないバスケ部の雑務をたまに手伝ってくれるお蔭か、***は今日も体育館の角で練習を見ていた。


「お前は誰見に来てんだ」


監督と話していた笠松がボーっとコート内を見つめる***へ声をかけるのが見えた。ぎりぎり聞き取ることが出来る会話に聞き耳を立てる俺は全く練習に集中することが出来ない。なんてったって、あの可愛さだぞ。


「もちろん由孝だよ」

「俺にはどうでもいいが」

「じゃあ聞かないでよ」


女子が苦手な笠松があれだけ普通に会話が出来るのは***だけだ。
「キャプテンが練習サボってていいのー?」なんて言いながら笑う***は遠目からでも本当に可愛い。これは恋人の俺の過大評価などではなく、彼女は本当にモテるのだ。恋仲になるまでお互いの恋愛事情なんて話したことは無かったけれど、彼女のことを狙っている男には"俺が居る"ということをわからせてバレないよう牽制してきた。漸く公に出来る恋人同士となったのに、部活中にも警戒しなければならないなんて俺の精神が保たない。
持っていたボールをシュートフォームでカゴへ投げると、的は広いという のにそれは入ってくれなかった。


「***ー、森山がイライラしてる」


後ろからそんな声が聞こえた。声の主は小堀、たまに空気が読めすぎて損している男だ。今も俺の空気を察したのか***と笠松の間へ入って「黙って見てろ」なんて言ってるけど、お前もだ。お前も近い。


「***センパーーイ!見たッスか?!ぜってー今の森山センパイより凄かった!」

「うん、見た。腕4本あるのかと思った」

「そんなまさかッス!」


2本ッス!オレ人間ッスもん!と叫ぶ黄瀬まで***に飛びつく勢いで走り寄る。笠松が黄瀬ファンを睨み追い出すようになってから、あのクソモデルは俺の***にやたらと構うようになった。もう一度言う、"俺の"だ。
女子の中でも***はそんなに身長が低い方ではないとい うのに、やはりバスケ部にいると小さく見える。見下ろされる彼女は自然と上目遣いになるのだが、その顔が攻撃力抜群の武器になっていると自分では気付いていない。ほら見ろ。笠松なんて顔真っ赤だぞ。


「森山センパイ、今のカゴに入らないのはマズイですよ」

「***センパイが気にな(る)んすね!」


***を囲む3人をどうしてやろう、なんて考えていると、見た目も性格も文字通りの2年レギュラー凸凹コンビ、中村と早川が声をかけてきた。
後ろからのそれに無表情で振り返れば揃って肩をビクつかせて***達のもとへ走って行き、ガシリと彼女の肩を掴んだ早川は早口過ぎてもはや何を言っているのかわからない。中村が通訳しているのか彼女の耳元で囁いているようだが、その行動ですら俺という火に油を注いでいるとわかっているのだろうか。突然笑い出した***が自分を囲む面々に微笑むと、口端を吊り上げた状態でニヤついたままゆっくり歩み寄って来た。


「由孝、妬いてるの?」

「お前……」


これでもかと睨みつけてやると、***はフワリと微笑み白い歯を見せる。この顔に弱いことを知っているのか、もう睨むことなんて出来なくて、細めた目は彼女の奥に見える面々へと向けることとなってしまった。
中村と早川は直立したまま僅かに頭を下げ、苦笑を浮かべて頭を掻く小堀の隣では黄瀬がきょとんとした表情でこちらを凝視している。笠松に至っては未だ真っ赤な顔のまま、俺に負けない睨むような目で視線をあちこちへ泳がせていた。


「アイツらに何言われた?」


目を***へ戻すと彼女は必死に笑いを堪えているようで、顔を覆っている両手を外したと思えばくるりと振り返って歩き出してしまった。構えていた5人にヒソヒソと何かを告げた彼女はまたこちらへ歩み寄って来るが、奥に見える連中はどことなく微笑んでいるように見える。今度は何だと呆れたように溜息を吐くと、彼女は俺の手を取って体育館を出てしまった。


「おい、」

「今日は私が由孝のこと独り占めしていいって」


笠松が許可くれた、と振り向きざまに最高の笑顔を見せた***を引き寄せて胸に納めれば、微笑む彼女は俺を見上げて「大好き」と言葉をくれる。いつの間にこんなに素直になったんだと疑問に思っていると、後ろからの大声に一気に顔が熱くなるのを感じた。


「森山センパーイ!***セ ンパイを取ろうなんて考えてないッスからねー!」

「***センパイ!グッジョブ!!」

「***ー、森山の機嫌戻しといてくれよー」


黄瀬、早川、小堀の声を聞いて震えながら視線を***へ戻すと、彼女はまた必死に笑いを堪えているようだった。


明日も、明後日も、その次の日も、彼女のことを可愛がるアイツらと、今俺の胸の中で満面の笑みを浮かべている本人に、思いきり振り回されるに違いないだろう。





(由孝、SGとしてピンチって中村が言ってた)

(……お前が俺だけ見てりゃカゴになんざ楽勝で入るんだけど)







END
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1万打記念リクエスト/黒那様






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