企画

□【クリスマス企画2015桐皇学園高校バスケ部のクリスマス直前恋模様-青峰】ヒロインと今吉の絡み
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「今吉さん、これ何のマネですか」


空き教室に、私の不機嫌な声が静かに響く。
理由も無く呼び出されたここには私と今吉さんしかおらず、ロープで椅子に縛り付けられた私は目の前で携帯のカメラを向ける彼を睨みつけているという状況だ。


「いいこと思いついただけや」


不気味に口端を吊り上げた今吉さんにカシャカシャと何枚も写真を撮られ、何に使うのかわからないそれの行方を聞いてみても、彼は「んー」と酷く曖昧な返事を返してはケラケラと笑う。「目隠しもしてみるか」なんて呑気な声と共に自身が身に付けているネクタイをはずそうとする姿に溜息を吐くと、彼はまたニヤリと厭らしい笑みを浮かべた。


「なんや、もっと嫌がれや」

「何か考えがあってのことなのでしょうが調子に乗りすぎです」

「さて何を企んでいるでしょう」

「あなたの頭の中は本当にわからないので」


淡々とした会話だが、私の脳内はフルに活動させているつもりだ。彼と言葉を交わす時は下手なことは言えないし、ポロリと口に出したことを後悔することだってある。そういう"ミス"を引き出させるような尋問から掛け離れた会話の時こそ、彼への言葉に気をつけなければならない。まったく神経を使う言葉選びは疲れてしまう。


「姉と違て警戒心剥き出しやな」

「そりゃ今吉さんがお姉ちゃんに何かするわけありませんからね」

「ごもっとも」


足で目の前の顔を蹴り上げることは出来るが大好きなお姉ちゃんの恋人となればそんな乱暴も出来ない。それもわかってこんなことをしてくるのだろう。まんまと目を覆われた私の視界はついに真っ暗になってしまった。


「なあ***、悪いことしとる気分なるな」

「悪いことしてますよ。私の気分は最悪なので」


またもシャッター音と今吉さんのクツクツと笑う声が聞こえてくる。「完璧や」なんて低い声が聞こえたかと思えばすぐにネクタイは取り外された。首を傾げれば優しく頭を撫でられ、小学生の時を思い出した。よくお姉ちゃんにも彼にも、こうやって頭を撫でられたから。


「それで、いい加減教えてくれてもいいんじゃないですか?」


手を縛っているタオルを解く今吉さんにもう一度問うてみると、彼は私の手首を擦りながら口を開いた。


「明日の練習試合は絶対負けとぉないんよ」

「……大輝ですか」

「これなら釣れる」

「こんなことしなくても私が……あ、」


そういえば、明日は久しぶりにお姉ちゃんと会う約束をしていた。朝早くに出発すると決めていたから大輝まで手が回らないとわかっているのだろう。無理やり学校まで連れて来るのが私の使命になっているから、姉との約束を知って今回の作戦を思いついたというところだろうか。いや、それより、生意気な後輩を弄る新しい遊びを思いついたようにしか見えないのだけれど。


「ほんま***が桐皇来てくれて助かったわ」

「本心ですか?」

「当たり前やろ。青峰は最強や思とるけどオマエのことになるとさらにパフォーマンスが上がる。"場所教えて欲しけりゃトリプルスコア"とか適当に言えばアイツわけわからんプレーかますはずや」


ニタリと舐めるような目と吊り上った口端が私へ向けられ、前髪をかき上げた彼は先程取った写真の加工を始める。明日は私を監禁している態で大輝を呼び出すのだろう。そしてお姉ちゃんとショッピングしている間のゲーム中、私の恋人はハラハラしながら完璧なプレーをするに違いない。


「今吉さん、ゲーム結果、ちゃんと教えてくださいね」


私のためにどれだけの得点を叩き出してくれるのか、楽しみになったのは目の前の男があまりにも自信満々に言葉を紡ぐからだ。欠伸を押し殺した今吉さんは「もちろんや」と意味深な笑みを浮かべ、それからまた携帯へと視線を戻した。


「協力感謝すんで。おおきに」


パタン、と携帯を閉じて立ち上がった彼にまた頭を撫でられ、優しく微笑まれる。先に理由を話してくれなかったことはまだ怒っているからと眉を寄せて睨みつけると、彼はポケットから私の好きなアメを取り出し、余裕な表情でそれを差し出した。





(こんなので許すと思ってるんですか)

(スキやろ?アメちゃん)

(……許す)





END
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1万打記念リクエスト/チョコ様






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