企画

□【クリスマス企画2015桐皇学園高校バスケ部のクリスマス直前恋模様-今吉】ヒロインと青峰の絡み
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3年の引退式を行うという今日、学校へ向かう途中でキョロキョロしている女を見つけた。真っ赤なマフラーをしている後ろ姿はどことなく見たことがある気がしてその様子を窺っていたが、ポケットに入れている携帯が着信を知らせて俺の気はそっちへ向いてしまう。『まだ!?』と電話の向こうで叫ぶのはさつきで、時間を確認すれば引退試合が始まる5分前をさしていた。


「あと10分で着くっつーの」

『それもうゲーム始まってるじゃん!』


あんたの彼女も来てるからね!と怒鳴られて、ああアイツも来てるなら急ごうと電話を切ると、少し離れたところから声をかけられて驚いた。だが驚いたのはその行動にではなく、声にだ。今しがた学校の体育館にいると聞かされた俺の恋人と全く同じそれに振り向くと、辺りを見渡していた真っ赤なマフラーをした女性が小さな歩幅でかけてくる。色白な上に真っ白なコートを着ている姿は、首に巻いている赤をやたら強調していた。そしてまたも驚いたのは、顔つきまで似ていることだ。近くまで来て軽く頭を下げた彼女を間近で見ると、俺の恋人よりも大人びた雰囲気を醸していて、アイツも成長するとこんな風になるのかと遠くない未来を少しだけ想像してしまった。


「すみません、道をお尋ねしたいんですが、桐皇学園高校ってこの辺りですか?」


恋人と同じ声で話す目の前の女はいくらか落ち着いている様子で、自分の恋人とは正反対だなと笑ってしまう。面白い女を見つけたしアイツにも見せてやろうと好奇心が募り、行き先は同じだからと並んで歩くことにした。


「あの、桐皇学園の方ですよね?」

「ああ」

「運が良かったです。こんな優しい方に偶然お会い出来て」


口調まで正反対だなと心の中で笑っていれば、隣を歩く女は笑顔を見せた。その途端ドキリと胸が鳴ったのは彼女に対して特別な感情を持ったからではなく、笑い方まで俺の恋人に似すぎていたからだ。


「あんた、名前は?」

「あ、すみません、******と申します」


わざわざ足を止めた彼女は丁寧に頭を下げ、持っていたバッグを持ち直してまた俺の隣へ小走りで着く。名前を聞いて合点がいった。似すぎている上に苗字が同じだということは、彼女は俺の恋人が溺愛している"お姉ちゃん"なのだろう。まさか声まで同じだとは思わなかったが、アイツの声を聞いているようで居心地は悪くない。無意識に頬が緩んでしまったが、あることを思い出して一瞬で引き攣ってしまった。


「もしかして……腹黒メガネの、」

「お姉ちゃん?!」


言いかけたところで、前方から愛しい声が聞こえた。隣に立っている女と全く同じそれだが、やはり声量も力もどこか違って聞こえる。気付けば学校の校門にまで着いていて、彼女は遅いから迎えに来たのだろうと想像が出来た。後で怒鳴られるのは目に見えている。


「え、なんで、お姉ちゃんがここに……ていうかなんで大輝と一緒に……?」


不思議そうな顔をする恋人に「迷ってたから連れて来た」と説明すれば、ポカンと口を開けたままだった顔が一変して笑顔を見せた。滅多にそんな表情見せないために俺の胸はまた煩く鳴り出す。抱き締めようと手を伸ばせば、目の前の愛しい人は俺をすり抜けて駆け出してしまった。


「今吉さん見に来たの?」

「うん、驚かそうと思って内緒で来たら迷っちゃって」

「言ってくれたら迎えに行ったのに。あ、紹介するね、私の彼氏」

「えっ」


同じ声が会話しているから見ていないとどちらの言葉なのかもわからない。俺を紹介された***さんは酷く驚いた顔をして「妹がお世話になってます」と慌てて頭を下げた。


「大輝、私のお姉ちゃん」


姉と腕を絡めてそう紹介されたがやはりそうだったのかと頭を過ぎったのは1つ。


「なんや***、来とったんか」


後ろから舐めるような声が聞こえたかと思えば異様なプレッシャーを感じて、振り返れば案の定予想していた人物の登場だ。既にゲームは始まっていると思っていたのにこの常に何を考えているのかわからない主将は俺の背後にスルリと立った。


「青峰〜おおきに。***連れて来てくれたんやな」


よくこれだけの状況でわかったものだ。最初から話を聞いていたのかと思えば一体どこに居たのかと恐ろしくなる。目の前の***さんは主将を見るなり表情を明るめ、その根源である今吉さんは俺の恋人諸共抱きしめた。


「あ"?!テメ、なにしてんだ!」

「青峰まだおったんか」


わざとらしく口端を吊り上げた腹黒メガネから恋人だけを引き抜くと、***さんはニコリと優しい笑みを浮かべてまたも俺へ頭を下げた。


「青峰大輝さん、て言わはるんですね。妹がいつもお世話になってます。ここまで送って頂きありがとうございました」

「お姉ちゃん、ちょっと関西弁混ざってる」

「あ。……翔一に会ったらなんか出ちゃう」

「もうオマエそっちでええやん」

「みんなにダメって言われるから」


そう言って笑う***さんは本当に表情豊かで、妹とは大違いだなと無意識に溜息が漏れた。そしてまたも頭を過ぎったことは2つ。


「俺が桐皇の生徒だってよく知ってたな」

「WCは応援に行かせてもらったので」


またも笑う***さんが義姉になるのは全然良い。だが頭を過ぎったもう1つはまさにこれ。


「俺はアンタと義兄弟になるなんてまっぴらだぞ」


今吉さんに向かってそう吐き捨てればシンと沈黙を呼び寄せてしまったが、すぐに年上2人に笑われてしまい居心地がとてつもなく悪くなった。


「行くぞ」


恋人の手を引いて踵を返すと、後ろから小さな会話が聞こえる。風に乗ってきたその声は、俺たち2人にしっかり届いていた。


「青峰、オマエの妹 嫁にもらう気満々やな」

「青峰さんなら妹にもピッタリだよ」

「ほなワシと青峰が義兄弟になるんは決定や」


なんてことを言ってしまったんだと途端に顔が熱くなったが、隣を歩く恋人は満足そうに微笑んでいる。ゲームはまだ始まめていなかったのか問えば、俺待ちだったと笑顔で答えられて、美人姉妹だなと確認するように振り返った。




(にしても似すぎだろ、声とか一緒じゃねーか)

(青峰、お前ワシの***に惚れたらこれから先の人生"苦"しかない思え)

(それそっくりそのまま返す)





END
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1万打記念リクエスト/曇り空様






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