企画

□一角と剣八が取り合う
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「一角、久しぶりだが容赦しねェぞ」

「もちろんっすよ隊長、あいつが絡んでんだから殺す気でいきます」


ニヤリと口端を吊り上げた2人は剣を突き出し合って対峙する。道場の壁際まで身を引いた隊員達は、殺気を放って私を睨んだ。

こうなった原因はつい20分ほど前の出来事。卯の花隊長に頼まれた書類を届けに来た私に、草鹿副隊長が声をかけてきた。背中に飛びついてきた彼女をよろけることなく受け止めた私は一瞥して軽く挨拶をし、そのまま弓親さんへ書類を渡した。そこまではいつもと何ら変わり無い、3日に一度はあるだろう面子での会話。なのに、今日はその中に一角さんが加わって飲み会に誘われたかと思えば、直後に現れた更木隊長に持ち上げられた。まるで草鹿副隊長のように。軽々と持ち上げられた私は背に副隊長を乗せたままで、彼女はさぞ楽しそうに笑っていたのだけれど、目の前の一角さんはこめかみの血管をピクピクと痙攣させて白目をむく寸前だった。ずり落ちないようにと更木隊長の首へ腕を回し、耳元で「降ろして下さいっ」と小さく叫んでみても、振り向いた彼に頬へ口付けられただけだった。あ、怒ってる、と気付いたが時既に遅し。一角さんは腰に挿している斬魄刀を鞘ごと引き抜くとそのままそれを更木隊長へ突き出し、弓親さんからは溜息を吐かれた直後に頭を軽く叩かれた。

そう、それがほんの20分前のことなのだ。
ドカン、と効果音がつくような2人の霊圧の上昇は隣の隊舎にまで届いたらしく、非番となっていた乱菊さんが寝起き丸わかりの格好で至極不機嫌な顔をして現れた。


「なに、なんの騒ぎ」

「え、えっと、」


二日酔いだろうか、少しばかり顔色が悪い彼女に問い詰められ、私は言葉を濁して俯いた。何事だと問われても実際のところ私もよくわかってはいない。彼女も他の隊員達が私を睨んでいるから問い詰めてきたのだろうが、またも上昇した対峙する2人の霊圧に血管は切れてしまったようだ。


「更木隊長!あなたがそんな霊圧で戦ったら十番隊も十二番隊も隊舎無しの生活になっちゃいます!別の場所でやってください!」

「あぁ?」


視線をこちらへ向けた一角さんと、ドスの効いた更木隊長の声に乱菊さんも一瞬肩を跳ねさせたが、「あ、そうか」と何かに気付いた様子を見せた途端、名前も知らない隊員の腕を私の肩へ回させた。


「いい?アンタは出来るだけ遠くへ逃げなさい。出来れば山奥。***も着いてってね。そこで一角の裾でも掴めばコイツは助かるでしょ」


え、どういうこと、と私と男性隊員の声が被ると同時に、背後に感じる霊圧が殺気混じりでこちらへ向けられていることがわかった。私の肩に無理やり手を回された隊員さんと共に恐る恐る振り返れば、目尻と口端を異様な様子で吊り上げた更木隊長と一角さんが身体ごと向いていて、ターゲット変更と誰かが口にしたのを皮切りに走り出す。
私にとっては立ってもいられないような霊圧は気分まで悪くなってしまって、後ろから迫ってくる鬼のような形相の2人をなんとかしようと隣にいる男へ声をかけた。


「あの、あなたは乱菊さんが言った通り逃げて下さい」


瞬歩のスピードも私は劣っている。なにがどうして私と彼にターゲットが変わったのか、よくわからないがこのままでは本当に殺される、とわけもわからないまま立ち止まった。
押し潰されそうな霊圧に耐えるため唇を噛み、泣きそうになるのを我慢しながら振り返る。途端にピタリと動きを止めた更木隊長と一角さんへ走り寄り、乱菊さんの言う通り一角さんの死覇装の裾を掴んで見上げた。


「お二人共どうされたんですか……?霊圧、抑えて頂かないと、私、もう、」


そこまで言って一角さんの胸へ倒れこんでしまった。立っているのも精一杯だったのだから、これくらいは四番隊員でも許して欲しい。
支えられる温もりに身を委ねると、目を見合わせた更木隊長と一角さんは一気に霊圧を抑えてくれたようだ。随分身体が楽になったと思うと、自然に頬が緩んでしまった。抱えられて、頬を撫ぜられたのがわかる。だけど意識を保つのは難しくて、遠ざかる前に聞こえた2人の言葉は起きた時に覚えてはいなかった。


「***は俺のだ、離せ一角」

「いやです。***は俺のです」





(あら、どうされました?)

(卯の花隊長!もう***さんを使いに寄越さないでください!)

(十一番隊の新隊員が泣きながら卯の花隊長のとこ逃げて来たって)







END
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1万打記念リクエスト/ヒロ様




(プリーズ ブラウザバック)



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