企画

□existenceヒロインと紫原でほのぼの
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撮影の合間、外の空気が吸いたくて近くのコンビニまで来てみると、商品棚から余裕で頭が飛び出している敦くんを見つけた。声をかけようと寄ってみれば持っているカゴに容赦なくお菓子を放り込む姿が目に映り、どんどん積まれていく光景にもはや気持ち良ささえ覚えてしまう。瞬きを繰り返していると私に気付いた彼は一瞬だけ目を大きく見開き「わー」と驚いているのかいないのかわからない声を出した。





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「仕事ー?」


コンビニの駐車場でゆっこさんからの『まだもう少し大丈夫』という電話を受け、携帯をポケットへしまったところで後ろから声をかけられた。片手に大きなビニール袋を2つぶら下げ、もう片方の手で持ったアイスをかじっている敦くんだ。


「うん、今は休憩中」

「ふーん」



灰皿の隣に置いてあるベンチへ腰掛けると、彼も隣にドカリと腰を下ろす。アイスを口に咥えたまま両手でビニール袋を漁り始めたと思えば、小さなプリンが差し出された。


「え、くれるの?」

「うん」


弁当のおかずいつも取ってるし、と私の膝の上へプリンを置いた敦くんはすぐに携帯を弄り始めてしまったけれど、それでもチラチラとこちらを窺っているのが横目に見える。封を切るまでは見続けるのかな、と思い「ありがとう」と一言告げ、ペリ、とフィルムを剥がせば彼は満足そうに微笑んだ気がした。
舌の上で溶けるような柔らかいプリン、甘みが口の中に広がって疲れた身体にエネルギーをくれるようだ。初めて見るパッケージだから新発売なのかな、ゆっこさんの分も買って行きたいくらい美味しい。


「それ俺のオススメ。うまいっしょー」

「うん、リピートする」


携帯から目を離した敦くんは既にアイスを完食していて、次のお菓子の封を切っている。お昼ゴハンも早いけどアイスも早かったら頭痛くならないのかな、なんて考えていれば今度は手にしているお菓子の袋を差し出された。


「ん、これも?」

「これもオススメー」


あ、これも取るまで見てるのかな。
全く引っ込もうとしないお菓子の袋がそう考えさせ、ジッと見下ろしてくる敦くんを見上げる。薄くて固いそれを袋から摘み出すと、彼はまた満足そうに微笑んだ。
パリパリのスナック菓子なんて本当に久しぶりだ。さっきまで甘いの食べてたから味は余計に濃く感じるけど、それでもたしかに美味しかった。


「ね、うまいっしょ」

「うん、おいしー」

「あとねー、」


またガサガサと大量のお菓子が入っているビニール袋を漁る敦くんに制止の声なんてかけることが出来ない。いつもと違う爛々とした表情がとても楽しそうで、あとでゆっこさんに怒られるのを覚悟して紹介してくれるお菓子を少しずつ貰う。どれもこれも本当に美味しくて、自慢気に「でしょー?」なんて言われたら怒られることすらどうでもよくなってしまった。


「いっぱい貰っちゃった、明日のお弁当多めに詰めて来る」

「わー、マジー?」


またも驚いているのかいないのかわからない声を出した彼だけど、その表情は"嬉しい"んだってすぐにわかってつられて私の頬も綻んでしまう。残っていたプリンを口へ運んでいると、少しだけ乱暴に頭を撫でられた。


「***ちんが笑ってんのやっぱいーねー」


笑顔の敦くんを学校で拝めるのはほんの少しだけど、今日はずっと微笑んでくれている気がする。
スタジオへ戻れというメールが届いて立ち上がると、彼も続いて腰を上げた。


「ダルいだろーけどガンバってねー」

「ありがと、敦くんも気をつけてね」


また明日、と別れてからも、なんだか心がぽかぽかしている気がした。




(あ!ゆっこさんにプリン買って来るの忘れた!)

(えーーー、もっかい休憩取るから買って来てよーう)






END
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1万打記念リクエスト/LL様






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