企画

□【目に見える壁を越えて】ヒロインが誠凛高校バスケ部と絡む
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ピアノとバイオリンの稽古が先生の都合で急遽休みとなり、一昨日メールで聞いていた大我さんの練習試合をこっそり見に来てみた。いつも日程を教えてくれるのに一度も応援に来れたことが無いから楽しみで仕方がない。ひとりだけ違う制服ということで変に目立っていることはわかるから、自分もジャージで来れば良かったと今更ながら後悔している。放課後の部活生ばかりの学校で目立たないためには、やはり制服よりもそっちの方が良かっただろう。もう遅いのだけれど。
キョロキョロと辺りを見渡せばこちらへ目を向けて話す2名の女生徒を見つけた。目が合った瞬間居住まいを正されたから私を見ていたことに間違いはないはずだ。一度小さく頭を下げてから歩み寄り、体育館の場所を問えば「案内します」と素敵な笑顔で応えてくれる。堅い校風の我が校とは少し違う、ここが彼の通う学校なのかと思うと無意識に頬が緩んでしまった。


「誰か見に来たんですか?バレー部?バスケ部?」

「バスケ部です」

「あ、私バスケ部の監督してるんです。良かったら下で見ません?」


ギャラリーよりよく見えるから、と続けて自己紹介をしてくれたのは相田リコさんという2年生の先輩だった。友人であろう方はそのまま帰ってしまい、私も名と学年を伝えれば「年下?!」と盛大に驚かれてしまう。監督ということに私も驚いていたが大我さんが以前話していたことを思い出した。少しコワイ人だと聞かされていたけど全然そんな風に見えない。小さな段差にも声をかけてくれるところは大我さんと同じな気がする。


「相手校16時半に来るからねー!」


体育館の扉を開くなりリコさんが叫ぶ。野太い声の返事とストレッチをしていたのであろう部員達がこちらへ目を向けたところで私は焦って頭を下げた。


「椅子出しとくから座って見てていいわよ」

「あ、いえ、お邪魔になると思いますので上から応援させていただきます」


物珍しそうな視線を浴びながらリコさんの言葉に応えれば、彼女はあからさまに肩を落としてしまう。「ありがとうございます」とだけ言い残してギャラリーへ繋がる階段へ向かう中、輪になっている選手達の中に大我さんを見つけることは出来なかった。

チラチラと向けられる視線から逃げながら、少しだけ小さくなっていると入り口に彼の姿を見つけた。大きな身体と赤い髪、見間違えることなんてありえない。「遅い!」とリコさんに怒鳴られているところは見たことのない彼を目の当たりに出来た気がして自然と頬が綻んだ。




:::




試合は誠凛高校の圧勝。
テレビでも見たことのないようなパスでいつの間にかボールの軌道が変わっていたことにも驚いたけれど、なによりストリートコートでしか見たことがなかった大我さんのバスケは格好良くて仕方がなかった。チームメイトと拳を突き合わせる彼の表情まで見える。下で見ていればもっと近くで見れたのかな。
柵へかけていた手を引いたところで、勢いよくこちらへ顔を向ける大我さんが目に入る。硬直している彼は私を視界に捉えたのだろう、見つかってしまったことに気まずくなりながら小さく頭を下げれば物凄い形相で眼下まで走り寄って来た。


「***!おまッ、なんでいんだ?!」

「ご連絡しようと思ったんですが少し驚かせたくて。大成功ですか?」


前のめりになって下にいる大我さんへ話していれば「危ないから下りて来い!」と少しだけ眉を吊り上げた表情で声を荒げられる。初めて怒られたなぁ、なんて思いながら彼の元へ向かうと呆けているのか大我さんの周りにいる他の選手の方々はあんぐりと口を開いたまま固まっていた。


「自己紹介が遅くなってしまい申し訳ありません。******です」


下げた頭を戻すと眼鏡をかけた方が思いきり大我さんの頭を殴っているのが見える。それと同時に早足で寄って来たリコさんに両肩をガシリと掴まれた。


「ちょ、***さん、もしかして火神見に来たの?!」

「はい」


笑顔で答えればリコさんは頭を抱えてしまい、どうしたのだろうと大我さんへ目を向ければ彼は皆さんにもみくちゃにされていた。


「火神!聞いてねえ!」

「もちろん親戚とかだよな火神」

「あんな美人知り合いにいるとかお前なんなの?!」


詰め寄られる彼は散々に言われ、だけど意を決したように赤い顔を振ったところで口を開く。


「だーー!彼女だよ!……です!」


その声と同時にリコさんが大きな目をさらに見開いて私を見やる。信じられないというようなその表情にどう応えていいのかわからず、とりあえず笑っておこうと笑顔を向けて頭を下げた。


「火神にカノジョいたとか聞いてない!」

「しかもあの制服とか」

「火神くん……知らない間にやることやってるんですね」


同じ1年生だと言う方々に囲まれ「よろしく!」と声をかけられる。練習試合の相手チームが帰るということで1人になった私はとりあえず壁際へと身体を寄せた。
整列した大我さんの表情はとても凛々しくて、試合中の彼をも思い出しては脈が早くなる。本当にかっこいい人。さらに惚れてしまいそう。






「来るなら来るって言えよ」


呆れた顔した大我さんが溜息混じりに私へ声をかける。一言だけ謝り笑顔を向ければ彼は困ったようにしながらも笑い返してくれた。頬を撫でてくれる大きな手、少しだけ耳へ触れた指に擽ったさを覚えて身を捩れば、肩に何かがぶつかった。


「わっ」

「く、ろこ!」


ジーーーッと私を見てくる目を見つめ返せばペコリと頭を下げられる。「黒子テツヤです」と名乗ってくれた彼は大我さんの"影"だと自称し、試合中のパスが彼によるものだと説明された。


「火神くん、カントクと主将が呼んでます。コワイので早く行ってください」


そう伝えられた大我さんの背中を見送れば、ひとり、またひとりと人が集まってくる。自己紹介の中に"部活中の火神"という項目を追加してくれて、それぞれが大我さんのことを教えてくれた。
学校が違う彼のことを知れて、自然と笑みがこぼれた。


「まさかあの火神がなー」

「木吉が自主練誘っても帰るわけだな。誘っても颯爽と……あ、これきたかも」

「マジバでも見なくなったし」

「水戸部が誰か伊月に反応してやれってよ」

「伊月さんさすがです。フリと黒子は何か言ってたな」

「はい 。最近いつもにも増して様子がおかしかったので」

「やたら土田さんと話すとこ見かけたよな」

「あー俺は聞いてたから」


プレゼントだとかイベントでどう過ごすとか、先輩に相談していたということも知ってしまい少しだけ申し訳なくなったけれど、学校でも私のことを考えてくれているのだと思えば嬉しくてたまらない。賑やかに大我さんのことを話してくれる彼等に今度は馴初めを聞かれたけれど、話そうとしたところで顔を真っ赤にした大我さんに肩を抱き寄せられた。


「あんまり囲むな!……いでください!」


照れながらいつものストリートコートでの待ち合わせをしたのだけれど、その日の夜の公園は随分と賑やかなものになった。




(今度は公式試合を応援させてください)

(次来るときは絶対ェ連絡しろ !)








END
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1万打記念リクエスト/ぶん様




(プリーズ ブラウザバック)



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