弱虫pdl

□誇らしさと嬉しさと、(6)
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「明良ァ、ノートォ」

「デジカメで撮ってたじゃん」

「明良のノートは教授のボソーて言うたことまで書かれとるけェのォ。……ワシにも貸せや」


食堂で友人達と昼食を摂り終えた明良に、荒北と待宮が声をかけた。目つきの悪い荒北に睨まれた女性達が逃げるようにその場を後にしながらも、待宮は貼り付けた笑顔でその背中へ手を振る。性格の悪い教授の講義では板書されず一度だけ口にしたことさえも試験問題となる、同じ学部、講義を取っている明良が、彼等にとっては救いの手、言わば最終手段となっていた。


「あと今日オレ休みネェ」

「ワシも」

「晩ゴハンなら金城と外で食べる約束してる」

「……はァ?!」


アルバイトが3人共休み。いつものように明良の部屋で寛ごうとしていた荒北と待宮は、一拍置いて言葉の意味を理解したようだった。


「ンだよそれ聞いてないんだけどォ!」

「金城アイツ真面目なフリして……!」


小声で呟きながら歯軋りをする待宮に、明良は苦笑を浮かべて言葉を返す。


「作っとこうか、私今日の部活用事あって出られないし、それが終わったら金城との約束まで時間あるから」


天使のような言葉、部活にも来ないという科白には荒北も不機嫌パラメーターが上昇したが、それでも手作りゴハンにはありつけるのかと一瞬目を瞬かせる。だが考えてみれば明良と食べるから格段と美味しくなるわけで、2人はまたぶすっと口を尖らせて彼女を挟むように椅子へ腰掛けた。


「え、なにコワイ」

「金城とのメシにオレらも行くっつゥ提案」

「ワシらがおったら出来ん話とか無いじゃろォ?エェ?」

「私はいいけど誘ってきたの金城だし、」

「ッしゃぁ!じゃあ決まりナ」

「時間と場所は金城に聞いとくけェ」


笑顔で立ち去る荒北と待宮に恐る恐る手を振り返した明良がポケットから携帯を取り出す。マナーモードで受信したメールは、久しぶりの巻島からのものだった。


〈 寒い 〉


たったそれだけでも明良の頬が緩む。携帯片手にニヤけるのはさすがに怪しすぎると片手で顔の下半分を覆い隠したが、柔らかく三日月に細められた目はメールを見るために覆うことなど出来なかった。
もうすぐ会える、それだけで明良は何でも頑張れると奮い立ち、落ち着いた気持ちで生活が出来ている。午後一の講義へ向かおうと立ち上がったところで、ある男と肩がぶつかった。


「あ、ごめんね」

「いえ、こちらこそ」


眉尻を下げて謝ったと思えばすぐに爽やかな笑顔を作り、彼は明良の肩を抱いてその身体を支えた。





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