弱虫pdl

□自慢であり誇りである。(20)
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「私も行っていいの?」

「もちろんです!」


インターハイ終了後の部活、明良も加えた総北高校自転車競技部のインターハイ選手メンバーは、小野田に連れられ秋葉原へ来ていた。


「はじ!めて!来た!」

「そうなんですか?!もったいない!ここには宝しか無いのに!」


楽しそうなのは明良と小野田のみ。眼鏡の奥で目を輝かせる小野田の隣で明良がウズウズしながら今にも走り出しそうになっている。
フリルだらけのメイド服を目にすれば「着てみたい!」と小野田のジャージを引っ張り、ガチャポンが並ぶ店先を通れば何のアニメキャラなのかもわからないというのに回し出す。


「3年のセンパイら浮きまくっとるのに真滝センパイだけ溶けこんで見えるのは気のせいやろか」

「明良さんのこんなテンション高いの初めて見たな」


鳴子と今泉が呆けている視線の先で身振り手振りの小野田のアニメ話を首を縦に振りながら笑顔で聞く明良は、それを動きまで真似て田所へ話し出す。「わかんねーよ!」と怒鳴られるも彼女は笑顔で「可愛いからカバンにつける!」と小さなキーホルダーを指先にぶら下げていた。


「インハイ優勝が相当嬉しかったみたいだな」

「そりゃそうだ。今朝も無駄にハイテンションな電話で4時に起こされたショ」


そして話の内容は覚えてねェ、と呆れながら笑う巻島に、金城も顔を綻ばせる。それぞれが小野田からのプレゼントを受け取り、鳴子と共に店内で流されているテレビ画面でロボットアニメを観ていた明良に、今泉も自然と口許を緩めていた。「ワイの弟がめっちゃ好きなんすよ!」「かっこいいね」と談笑している2人に、後ろから声をかけたのは少しばかり頬を赤らめた小野田だった。


「あの、真滝さんにはコレを」

「ん?何この娘カワイイ」

「ラブ☆ヒメの主人公、姫野湖鳥です!」


明良が渡されたのは10センチ程の小さなフィギュア。田所へのプレゼントであるCDのジャケットと同じキャラだと気付いた明良は「ありがとう!」と伝えて満面の笑みを浮かべ金城や巻島のもとへ駆ける。田所に「5割お揃いだね」と口にすれば、気を良くしたのか彼も笑顔でその頭を撫でた。


「そんなはしゃぎっ放しだと帰りの体力もたねーショ」

「もたせる!バカにしないで」


一瞬ツンとした表情を見せるもすぐに笑顔に戻った明良に、金城も口に弧を描いて彼女の頭を撫でる。気付けば注目の的となっている3年生達を遠くで見る鳴子と今泉は、ただでさえ目立つ明良を早く店から出したくて苦笑を浮かべていた。




:::




「巻島いっぱい貰ってる」

「でも10個は多すぎショ」


特にお世話になったからとたくさんのくも太郎を手にした巻島が溜息交じりながらも笑みを浮かべる。「嬉しいくせに」と肩を小突く明良の頭を撫でた巻島は照れたように口を尖らせたが、すぐにはにかみその手を取った。


「今日俺ン家」

「……うん!」


小声で言う巻島に笑顔で返した明良の表情が、直後に一瞬だけ曇ったことを誰も気付かなかった。






(プリーズ ブラウザバック)



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