黒子のバスケ short

□ハーフタイム
1ページ/1ページ



※成人済み・大学生設定




見たことないカーテンが開いたままの窓からは雲一つかからない太陽の陽射しが入ってきていて、肌に直に感じるシーツの感触に鳥肌が立った。


「………うそでしょ」


未だ正常には働きそうもない頭をフル回転させるもどうしてここにこんな格好でいるのか全く思い出せない。
キングベッドの布団を捲れば肌には何も身に付けていない文字通り全裸の状態で、下着やら服やらが床に散らばっているのが見える。
ガバリと勢いよく身体を起こすと下腹部と腰に妙な違和感を覚えた。
昨日はサークルの飲み会で後輩に散々飲まされたことは覚えている、助けてと周りにいた先輩達に縋っても悪ノリした面々にさらに飲まされたことしか思い出せない。
誰とここに辿り着いたのか、密かに想いを寄せている人がいるのに最悪だ、と血の気が引くのと同時に耳にはシャワーの音が聞こえる。
ちょっと待ってこの展開どうしよう、と考えながらショーツを履いて服を掻き集めていると、ガチャリと静かに開いた扉の音に持っている服で前を隠しながら慌てて振り返った。


「なんや、起きたんか」

「い……今吉?!」


高校時代からの同級生であり六年もの間絶讃片想い中の相手が下半身にタオルを巻いただけの姿で現れ、巡っていた頭の中が一気に真っ白になった。


「その顔は昨日のこと覚えとらんな」

「え、ちょ、ちょっと待って、え、」

「パニックか」

「パニック!」


何も考えられないというより頭の中がぐちゃぐちゃと記憶を呼び起こす。
昨日のことではなく桐皇学園バスケ部の思い出だとか大学に入学してからのバスケ三昧生活だとか、友達にも、もちろん本人にも、この気持ちがバレないように過ごしてきたというのに、酔った勢いで気持ちを告げずに一線を越えてしまったなんてあんまりだ。


「待って今吉、ごめんなさい覚えてたかったけど記憶なくて詳しくは聞きたくないけど説明してくれるとスゴく有難いって思うのにどうしよう聞きたくない」

「ほんまにパニクっとんな」


携帯を弄る今吉はベッドへ腰掛けながら「結局どないしろ言うねん」なんて言いながら笑っている。
とにかく何か着ようと背を向けて持っている服を漁っていると、後ろからフワリとローブがかけられた。


「とりあえずコレ着とき」


耳元で囁かれて肩が跳ねる。
持っていた服もその場で全部落としてしまい掛けられた真っ白なローブを掴めば、チュッと首筋に吸い付かれた。


「なーんも覚えてないん?」


腕をクロスして両肩でローブを掴む私の手に、そっと重ねられた今吉の大きな手。
撫でるように首筋を舐められ、耳朶を甘く噛まれれば私の口からは我慢出来ずに微かに声が洩れる。
後ろから今吉の指が私の口内へ入ってきて、舌を指の腹で撫でられた瞬間、下腹部に違和感を感じて思い出した。
そうだ、今吉と一つになって、あまりにも嬉しくて、気持ちを口にしてしまったんだ。


「ん、……ふっ、」

「思い出したか?」


コクリと頷けば、口から抜かれた指が唇をなぞる。


「ワシのことずーっと?」

「好き……今吉が好き、んっ」


ペロリと耳を舐められて、またも肩が跳ねる。


「昨日下の名前呼べ言うたやろ」

「好き……翔一」

「ん、ワシもや明良」


振り向かせられて強引に奪われた唇からは、離れた際にまた言葉が紡がれた。


「ワシもずーっと好きやったで」





(これ昨日も言うてんけどどうせ覚えてへんやろ)

(……ごめんなさい)







END
(プリーズ ブラウザバック)



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ