黒子のバスケ short

□ぶらぐ
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明良の彼氏というポジションについて一ヶ月。

未だ影の薄い相棒にも先輩であるチームメイトにもそのことは話せないでいる。
マネージャーとして同じ部に所属している彼女が「聞かれたら答える」と言っていたのをなんとなく俺も真似ることにしたが、聞かれることも無い上に答えたとしても誰があの学校一知名度の高い女生徒の彼氏が俺だと信じてくれるだろうか。
というより明良に彼氏がいると信じたくない学校内の男子生徒達はその事実から目を逸らそうと知りたがろうともしていない気がする。
俺もその中の一人だったから。
告白されたことなんて無いと言っていた明良は自分がどれだけモテるかを知らない。
女友達が散々言い聞かせているようだが本人はそれを信じる気ゼロだ。
だからそんな彼女から告白された時は明日天地がひっくり返るんじゃないかってくらい驚いたし、躊躇することなく「お、俺で良ければ」なんて弱々しい返事をしてしまったことに後悔している。


「明良ちゃんってやっぱり彼氏いるの?」


誰もが聞けなかったことを口にしたのは休憩中のカントクで、ドリンクを口にしていた部員は漏れなく噴射している。


「はい、いますよ」


その返しに床を拭いていた手が止まったまま全員の目が明良へ集中していた。
緊張と絶望の空気の中でも一番心臓が煩く鳴っているのは俺かもしれない。
どこのどいつだと周りの目はギラギラしているが会話を続ける明良とカントクはそんな空気に気付いてもいないようだ。


「あ、やっぱりいるんだー。同じクラスの男子がやたら明良ちゃんの連絡先教えてって言ってくるんだけどそれならダメだね」

「そうですねー、私も火神くん一筋なんでバスケ部以外の男の人に連絡先はちょっと」


ピシリと効果音がつきそうな程凍りついた空気が嫌でも俺の身体に纏わりつく。
一瞬で視線が俺へと集中したと思えば隣に立つ主将には容赦なく脇腹をど突かれた。


「おいおいおいおいどういうことだ?」

「いや、まあ、その、はい」


まさかそんなことあるわけ無いというような雰囲気の中、いつの間にか黒子が明良へと詰め寄っていた。


「真滝さん、その言い方だと火神くんとお付き合いされているように聞こえますが」

「あ、うん、そうなの」


笑顔の明良がこちらへ向いたと思えば「火神くん!」と元気に俺の名を口にする。
またもピシリと空気が固まった中、駆け足で走り寄って来た彼女は俺のシャツの裾を摘んで満面の笑顔で見上げてきた。


「そういえばバスケ部のみんなにも言ってなかったね」

「お、おう」

「一ヶ月です!」


腕を絡めて思いきりピースを前に突き出した明良には俺への視線がどれだけ刺々しいものかわかっているだろうか。
殺意さえ感じるそれに怯みそうになるが、実際のところ自慢したかったのも事実で。
未だに信じられないという目を向けてくるカントクにも見せつけるように明良の額に軽く口付ける。
赤くなった彼女の顔を見た全員が断末魔の様な雄叫びを上げる中、絡められた腕にギュッと力が入ったのがわかった。



(私クラスのみんなに自慢したいくらいかも)

(俺は全校生徒に自慢してーよ)






END
(プリーズ ブラウザバック)



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