弱虫pdl

□自慢であり誇りである。(9)
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「起きるの早すぎっショ、何時に起きた」

「3時」

「ほぼ寝てねーだろ!」


熱かったんだもん、と巻島と田所へ答える明良は口を尖らせながらボトルを渡す。シャワーを浴びた後にドリンクの準備を始めれば続々と出て来た部員がストレッチを始めた。


「巻島が寂しそうだったから一回布団戻ったんだよ?」

「どっちが寂しそうだったか」

「え、私なわけないじゃん」

「だいぶ甘えてたっショ」


やーやー言い合う巻島と明良を横目に田所が溜息を吐く。自分も一緒に寝たときに抱き締めておくべきだったと後悔しかしていなかった。だが彼が言い合う2人を見ていて思うことはひとつ、あの仲は裂けないのだろうということだ。


「なあ金城、俺はもう諦めついてるぜ」


同じように2人を眺めていた金城に田所が声をかけると、サングラスを押し上げて小さく息を吐く。苦笑を浮かべた田所は既に走り始めている1年生へと目を向け、それからまた口を開いた。


「お前だって明良の気持ち気付いてんだろ」

「ああ」

「まあ俺はお前でも巻島でも明良のこと任せられるって思ってっからよ、悔しいが身ィ引くぜ。お前は、」


一瞬黙った田所だったが、すぐにニカッと笑い続ける。


「聞くまでもねぇか!」


絶対に諦めねーもんな、と金城の肩を叩いた田所はそのまま「明良ー」と言い合う2人へ足を進める。そんな様子を見ながら金城はまた溜息を吐いた。


「諦めたくはない、がな」


巻島が乱暴に頭を撫でた後の明良の顔を見て、金城は自嘲気味に笑みを浮かべる。


「俺が撫でてもあんなに赤くはならないな」


彼の寂しそうな小さな呟きはすぐに風に乗って消えてしまった。







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