本・獄都事変
□仕事の説明
1ページ/3ページ
ごんべいside
わけがわからないままニンゲンさんについていくと、とある部屋の前で止まる。
恐らくここが、このニンゲンさんの上司の部屋なのだろう。
このヒトでここまで怖いのだから、上司なるヒトはもっと怖い。そんな方程式が出来上がっていた。
(どうしよう……)
緊張がピークに達した頃、頭のなかに、聞き慣れた声が響いた。
それは、もう聞けないと思っていた声で。
自分を安心させるには、十分だった。
(私が、助けてあげる)
それは紛れもなく、あのとき食べられたはずの鈴の声だった。
そして、促されるまま部屋にはいり、説明を受ける。
「悪いが、帰らせることはできない」
そう言われて、なにかが終わったような感覚に包まれる。
「これは詳しい話をしなければいけないようだな」
そう上司のヒトは言って、もう一人のニンゲンさんを追い出した。
あぁ、せっかくの小さな心の拠り所が……。
二人きりになったこの部屋で。
「さて……。やはり、単刀直入に言うべきか」
上司のヒトは話し始めた。