本・獄都事変

□夢から覚めて
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____白。
目の前に見える色は、すべて白。

夢か?

そう思って、起き上がり、まわりを見回してみる。


棚、花、お皿、窓…。その他もろもろ。
どうやら、夢ではないようだ。

今回はどのくらい眠っていたのだろうか。
あれくらいの怪我なら、一週間ほどだろうか。


………というか、ここはどこだろう。
いつも通り、これからのことを考えていたが、家が無いんだった。
家が無いなら、自分はどこに寝ているんだ?

…………でも、あれ? どうして自分は家が無いと思うんだ?


なんだか、まだ夢を見ているようだった。

訳がわからないことが起こりすぎて、頭の中がごちゃごちゃだ。
(誰か説明して)
と思った時。


部屋の扉が開く音がした。
びっくりして硬直する。

?「あぁ、起きた? ………ってあれ、驚かせちゃった? ごめんね」

声の主はこちらに話しかけているようだ。
緊張と警戒心がMAXになる。

しかし、話しかけられているのに、何も言わないのは失礼、と思い、かねてからの疑問を口にする。

『…………、ここはどこですか?』

「ここは、特務室の医務室だよ」

『…………??? そう、ですか』

おそらく、自分の顔にはハテナマークが浮かんでいることだろう。
(特務室って、どこですか)
その言葉をのみこんで、一応納得しておく。

ひとつわかったのは、ここは自分の家では無いということ。
ならば、やることはひとつ。

『帰りますね、ご迷惑おかけしました』

他にも、いろいろ気になったことはあるが、『ぐんじきみつ』とやらもある時代だ。
根掘り葉掘り聞かない方がよかろう。
そう思って、ベットから降りる(ベットで寝ていた)。

靴は近くにあった。
よしよし、と思って靴を履いて立つと、なんだか身体に違和感があることに気がついた。

「ちょっ、まって! えっと、」

ニンゲンさんが、何が起こったのか慌てている。
無視して、違和感について考えていると、風が吹いてきた。
どうやら窓があいていたらしい。

その感覚で、ようやく違和感の正体に気がついた。

『すみません、僕のペンダントを知りませんか?』

若干震え声になりながら問う。
たしか、あのとき(とはいってもはっきりは覚えていないが)取り返して、手のなかにあったはずだ。
ここにいるということは、誰かがあの場所から運んできてくれた、ということになる。
ならば、その運んでくれたヒトが知っているハズ。

恐らく、ここでいろいろ看病とかしてもらったんだろう。
それなら『ここのヒトに聞くのが一番!』………と、脳は必死に言い訳を構築しているが、本能は『まだ信用できないヒトに聞いちゃいけない』といっている。
ここは、心を信用してみた。

「ん?ペンダント?」

そのヒトは、何か心当たりがあるのか、いろいろごそごそしていたかと思うと、どこからかペンダントを取り出した。

それに安堵すると同時に、不安になる。
もし、返してもらえなかったらどうしよう。

「これ、君の?」
『はい』

生返事をしながら、必死に、返してもらえなかった時の打開策を考える。
戦う?奪う?
しかし、ここには流も零もいない。
さぁどうする………!

「はい、どうぞ。君の近くに落ちてたよ」
『…………はい?』
「……、なに?どうかした?」

まさか、すんなり返してもらえるとは。
喜びと、警戒心が沸き起こる。

『ありがとうございます』

お礼をいいながら、素早く自分につける。
ニンゲンさんが、苦笑いしている気配がした。

首にかけようと、頭を少し下に向けたとき、ようやくもうひとつの違和感に気がついた。

『…………服が、違う』
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