本・獄都事変
□愛がために
1ページ/4ページ
斬島side
今回の任務先にいた、生者か亡者かわからない者。
そいつが、(明らかに亡者とわかる)亡者と戦っていたらしい。
しかし、そいつは見事に投げ飛ばされたらしく、俺達の横を通りすぎていった。
背後で、壁にヒビが入る音もする。
聞くだけで、痛々しい音だった。
そいつに駆け寄る佐疫に続いて、自分も覗きこむ。
そいつはチラとこちらを見たかと思うと、なにかを呟き、持っていた刀を振るった。
とっさに避ける。
しかし、それに反応することはできたが、佐疫は避けることができなかったらしい。
彼の小さな呻き声が聞こえる。
見ると、足が斬り落とされていた。
すぐさま駆け寄って、傷の状態を見る。
斬島「大丈夫か!?」
佐疫「だ、大丈夫。斬り落とされた、だけだから。くっつればすぐに再生するよ」
彼は、そう言って笑う。
正直、いたたまれない。
佐疫「それより斬島、早くあの子達を追って」
斬島「………え?」
佐疫「俺のことはいいから、大丈夫だから。早く追って。任務、失敗しちゃう」
渋る斬島を、佐疫は優しく諭す。
斬島「…………わかった。………なおるまで待っていろ」
そう言って、アイツらを追いかけて、走っていった。
彼を動かすのは、仲間を傷つけられたという、怒りから。