本・獄都事変

□誰?
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『みーつけた』

ごんべいは、長い廊下のさきにアイツの気配があると思った。
そして走り出す。
手は、先ほど取ってきた二本の刀のうち、長い方へかけられている。


しかし、そこでみたのは、二人のニンゲン。
二人とも長身で、いつぞや会った巨人に似ているヒトもいる。

どうしてこんな家に、こんな場所にニンゲンが?
外はいい天気で雨など降っていない。
この季節だと、まだまだ日も沈まないはず。
なのに、なぜ?雨宿りでも、一晩泊めろというのでもないなら、なぜこんな山奥に来るのだ?

やはり外れたことを考えて戸惑いながら、ごんべいは走るスピードをおとし、気づかれないようにしながら、ニンゲンに近づいていった。


あと数歩でニンゲンの視野に入るだろう、というほど近づいたとき。

いきなり、あの気配を感じる。
発信源は、廊下の突き当たり。
恐らくこの廊下を一直線に横切るつもり。
その最中で、このニンゲンをも喰ってしまおうという魂胆。

そこまでの計算は簡単だった。
あちらから出てきてくれるならありがたい。ここで迎え撃つ事だってできる。
しかし、目の前を歩くニンゲン達はどうなるのか。

ニンゲン達は、まだこの気配に気がついていないようだった。
ソレもそうか、だって、ニンゲンだもの。
わかるとしたら、せいぜい勘のいいやつぐらい。万が一見てから避けたとして、それはものすごい身体能力があるやつだけだろう。
どうするか。


突然、突き当たりの壁が不自然に盛り上がった。

(時間の問題。なるようになる。)

そう判断してからの行動は早かった。


二人のニンゲンのうち、一人はものすごい身体能力があったらしく、軽々避けられる。
しかし、もう一人は、少しタイミングがずれていおり、あのままでは、うでの一本でも喰いちぎられかねない。

(もともと二人の予定が一人に減ったんだ。楽じゃないか。)

自嘲気味に微笑んだあと、志音は、その一人を壁に向かって蹴り飛ばした。
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