本・獄都事変
□話は一区切りついた?
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道中。
ほとんど会話がない。
あの部屋まで案内してくれたときは彼がいろいろしゃべってくれたから、今度はこっちが!
等と意気込んでみる名無しのだったが、今一ついい話題が無いようだ。
とりあえず、話しかければなんとかなるかー。という持ち前の行きたりば当ったり精神で、話しかけてみる。
『……佐疫さん』
「ん? ……って、ちょっとまって。俺名乗ってたっけ?」
『いいえ。肋角さんがそう呼んでましたので。…もしかして、違いました?』
名無しのは焦る。
確かに、コードネーム等の類いかもしれない。
本人の口から聞いてないのに言うべきでは(覚えるべきでは)なかったかもしれない。
「ううん、あってるよ。改めて、俺は佐疫。よろしく」
『はい、よろしくお願いします』
表面上では、ニコニコしているが、心の中では盛大に安堵のため息をついている名無しのなのであった。
「ところで、どうしたの?」
『あ、えと…、他の獄卒の皆様は、どのような方がいらっしゃるのかなーと。思いまして』
さすがに、行き当たりばったりだと厳しい。
と、いつもいつもその精神で行動したとき思っていることを思う名無しの。
(要は学習能力が無いのである。)
「そうだね、結構いろんなやつがいるよ。真面目なやつに、面倒くさがりに、元気なやつに、呑気なやつに、いろいろ厳しいやつに……。とにかく、いろいろだね」
『そうみたいですね…』
本当にいろいろだな、と少したじろぐ。
今彼が言っただけでも五人だ。
つまり、最低五人はいるということか…。
__そして、またも沈黙が訪れる。
何も喋ることがないぞ!どうするよ、俺!!
もういっそ、話さなくてもいいか、と思い始めた頃。
家の近くの森に差し掛かってきた。
そういえば、ここには硬い、(戦うにしても日常で使うにしても)いい木がいっぱいあったんだよな。
今はニンゲンが切ってしまって、ほとんどないけど。
そう、過去を振り返ってしみじみしていたところで気づく。
(あれ? そういえば僕、武器何も持ってないぞ?)
素手で殴り込みに行くというのか。
我ながら呆れる。